安全保障と「境界線」の政治学の最前線
なぜ沖縄に基地が集中しているのか
米軍基地は沖縄本島の2割近くの面積を占めます。これは東京の山手線の内側の面積の4倍くらいに相当します。沖縄の基地問題はテレビや新聞の紙面を賑わせ、安全保障上、米軍基地は必要という説明がなされてきましたが、戦前の沖縄は軍隊とはほぼ無縁でした。基地の歴史的な起源を探ると、沖縄戦にたどり着きます。戦争準備として、日本軍が建設した沖縄基地が終戦後に米軍のものとなり、戦後体制の「要石」とされたのです。日本にとって沖縄の基地問題とは、今日まで継続する沖縄戦の記憶そのものと言えるでしょう。
「境界線」はどのように引かれたか
メディアが沖縄を取り上げる際、日本の境界をめぐる議論とも関連づけられることがあります。歴史的にも、また現在も国と国との「境界線」を引く場合、さまざまな紛争が生じています。国境問題を平和的に解決する手段としてまず国際法があります。国境の起源や帰属を歴史的にさかのぼることも必要ですが、やはり終戦後の取り決めが重要な根拠となります。サンフランシスコ講和条約によって解決されたと考えるかもしれませんが、この講話条約は「パンドラの箱」だったのです。「独立」を引き換えに、日本は沖縄を切り離したのです。基地問題を議論するにあたり、日本が沖縄を切り離したという事実も忘れてはならないでしょう。
沖縄の声はなぜ届かないのか
「沖縄の問題だから、沖縄で議論すればいい」、「政府が金で解決すればよい」などの意見に惑わされてはいけません。また、テレビや新聞、インターネットなどから得られる情報がすべてではなく、誤った事実が伝えられることもあります。
沖縄の人口は日本全体の100分の1程度で、確かに「少数派」です。民主主義的な政治体制であっても、少数派の意見を政策に反映させることは難しく、沖縄の住民の声が国会には届かないのが現状です。沖縄問題の解決への糸口は、沖縄を「要塞」や「不動産」としてとらえることをやめることであり、私たち自身が「島んちゅう」になることです。
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長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 准教授 コンペル ラドミール 先生
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