次世代の半導体で電力問題を解決する
省エネルギーに役立つ半導体
近年、電力の需給がひっ迫して大きな問題になっています。そこで、省エネルギーを進めるためにさまざまな研究が行われています。電力を機器に合った使いやすい形に変換する「パワーデバイス」もその一つで、そこに使われる半導体の改良が進められています。
電力変換による損失を激減させる
発電場所から家庭などに届くまでに、電力は何度も変換されます。変換の度に発生する損失は、トータルでおおよそ10%程度に及ぶと見積もられています。変換器に使われている半導体の素材はシリコンですが、これを窒化ガリウムに置き換えると損失が1%程度に減ります。ここ数年間の日本の全電力発電量に占める原子力発電の割合は4~6%ですから、それをはるかに上回る量の電力を浮かせることができるのです。
なぜ損失が減らせるかというと、窒化ガリウムはシリコンよりも高い電圧に耐えることができ、薄くても壊れないことから、抵抗が小さくなり熱損失が少なくなるためです。家庭用ACアダプターなどには、既に窒化ガリウムが使われています。しかし、電気自動車などに使えるようにするためには、より高品質な結晶を作ることが必要です。家庭用の電圧は100Vですが、電気自動車では1200Vもの高電圧に耐える必要があり、現在の技術で作った結晶やデバイスでは十分な性能が得られないのです。
より高品質な結晶作製をめざして
窒化ガリウムは自然界には存在しない人工的に作られた比較的新しい物質なため、結晶に関する知見の蓄積が限られています。より高品質な結晶を作製するために、結晶のどこに問題があるかを調べる計測手法から開発が進められています。
窒化ガリウムは、白色LED照明の光源である青色LEDの材料でもあります。青色LEDを実現可能とする窒化ガリウムの結晶作製技術により、日本から3名の研究者がノーベル賞を受賞しました。次世代半導体の素材として窒化ガリウムの研究が世界中で盛んに行われていますが、その中でも日本での研究が活発で多くの成果をあげています。
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先生情報 / 大学情報
大分大学 理工学部 理工学科 電気エネルギー・電子工学プログラム 准教授 大森 雅登 先生
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半導体工学、固体物理学、量子力学先生が目指すSDGs
先生への質問
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