日本のスゴイ技術! 世界最強の磁石を支える研究
磁石は生活必需品
「磁石」は、身の回りのさまざまな製品に使われる生活必需品です。例えば、パソコンやスマートフォン、テレビや冷蔵庫、電気自動車やハイブリッドカーといったエコカーなどに利用されています。これらに使われる磁石は、「永久磁石」と呼ばれる電流を切っても磁力を保つもので、複数の元素を混ぜて作られています。
世界をリードする日本の磁石研究
磁石の開発は、大正時代に作られた「KS鋼」から、現在世界最強の磁力を持つ「ネオジム磁石」に至るまで、日本の研究が世界をリードしています。ネオジム磁石は、ネオジムと鉄、ホウ素が主な材料で、ハイパワーのモーターを実現し、機器の小型化・軽量化、省エネに大きく貢献しました。その効果は、原子力発電所数基分の削減に匹敵すると言われます。
もともとネオジム磁石には、熱に弱いという欠点がありました。自動車のモーターに使う磁石には、約200℃の高温にも耐えることが求められます。そこで、ディスプロシウムというレアメタル(希少金属)を加えて、耐熱性を高める製法が開発されました。ところが、ディスプロシウムは埋蔵量が少ないうえ、ほとんどが中国で採れるので、2010年に中国との関係が悪化すると、安定的な輸入ができなくなってしまいました。
さらなる改良に挑む
ディスプロシウムをなるべく使わない磁石を作るため、日本はさらなる技術革新に挑みました。磁石の構造を調べて、製法を改良したのです。構造を調べる手法の一つに、「磁区」の観察があります。磁石の中には、さらに小さな目に見えない磁石がたくさん詰まっているので、光学顕微鏡を使ってそれを可視化するのです。材料や熱などによって、磁区がどのように変化するのか、物理的なメカニズムを解明すれば、製法の改良につながります。こうした研究の成果によって、ディスプロシウムを低減した磁石が開発されました。今後も、身の回りの製品をもっと便利に、地球環境を改善する先端材料=磁石の研究開発は続いていきます。
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先生情報 / 大学情報
九州工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 竹澤 昌晃 先生
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