X線天文衛星で超新星爆発のメカニズムに迫る!
X線、ガンマ線で見る高温、高エネルギーの宇宙
宇宙には、可視光だけでなく、電波や赤外線、紫外線、X線、ガンマ線と、さまざまな波長の電磁波が飛び交っています。X線やガンマ線を発するのは、1000万度や1億度といった高温・高エネルギーの天体です。ノーベル物理学賞受賞者のリカルド・ジャコーニ博士が1962年、初めてX線を放つ太陽系外の天体を発見して以降、X線で宇宙の姿をとらえる「X線天文学」の研究が進められています。
さらに進化した日本の7基目のX線天文衛星
宇宙から放出されるX線は大気に吸収されて地表には届かないため、日本やアメリカ、ヨーロッパの国々は「X線天文衛星」を打ち上げ、宇宙からやって来るX線を観測しています。日本はこれまでに、1979年の「はくちょう」から2016年の「ひとみ」まで、計6基の衛星を打ち上げてきました。打ち上げのたびに、より精度の高い観測結果が得られるようになっており、2021年度に打ち上げられる「XRISM(クリズム)」は7基目です。
過去に爆発した超新星の残骸を観測
X線の観測を通じて、ブラックホールの姿や銀河団の高温ガス、中性子星同士の衝突・合体など、宇宙で起こるさまざまな現象がわかってきました。星が一生を終えるときに起こる「超新星爆発」もその一つです。現在、数百年から数万年前の爆発後に残された「超新星残骸」が放つX線が観測されています。そのデータを解析し、爆発のメカニズムを探るヒントが得られてきました。
例えば、1572年に爆発した「ティコの超新星残骸」について、2003年、2007年、2009年、2015年の観測データを解析したところ、爆発で起こる衝撃波の膨張速度が急激に遅くなったことや、鉄やシリコンなど爆発によってつくられた元素の量や分布がわかりました。これらの結果から、星がどのように爆発したのかを推測することができます。「XRISM」では、元素についてさらに正確な測定ができるのではと期待されています。
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先生情報 / 大学情報
甲南大学 理工学部 物理学科 准教授 田中 孝明 先生
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