液体を粉にする? 微粒子によるコロイドの安定化
「コロイド」状態の特徴とは
塩や砂糖を水に入れると、分子レベルで均一に水と混ざり、「溶解」します。一方で、油と水の場合、同じ容器に入れても溶解は起こりませんが、かき混ぜることで、片方の物質が、分子よりは大きいけれど、顕微鏡でないと見えないほどの粒になって「分散」します。この状態を「コロイド」と言います。特に、2つの液体からできるコロイドはエマルション、空気と液体からできるコロイドは泡とよばれます。通常、コロイドは持続しません。表面積をできるだけ小さくしようという表面張力の働きで、比較的短時間で分離・沈降してしまいます。しかし、世の中では安定化したコロイドがさまざまな分野で見られます。
エマルションや泡を安定化する界面活性剤と微粒子
例えばマヨネーズは、油と酢からできるコロイド(エマルション)ですが、分離しません。これは、卵黄に含まれるレシチンに、界面活性剤の働きがあるためです。レシチンが油の粒の界面に吸着し、膜をつくるため、エマルションが長期間安定します。
界面活性剤は、分子サイズのコロイドを安定化させる物質ですが、分子が集合してできる「微粒子」も安定化に役立ちます。微粒子は界面活性剤にはない機能を有し、化粧品、食品、塗料などの分野におけるエマルションや泡の安定化で注目されています。
微粒子で水滴を包む「ドライウォーター」
微粒子を使うと界面活性剤にはできない新しいコロイドを安定化することができます。その例である「ドライウォーター」は、直径が髪の毛の太さ程度の小さな水滴の集合体であり、見た目や触った感じは「粉」です。しかし、指で押すと簡単に水滴がつぶれて水があふれます。微粒子が水滴の界面に吸着することで、水滴が小さな粒のまま、空気中で安定して存在しているのです。この技術は、液体を粉にする技術であり、化粧品や接着剤への応用が期待されています。
ただし、なぜ微粒子がコロイドの長期安定化をもたらすのか、というメカニズムについては未解明の部分も多く、今後の研究課題となっています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
甲南大学 理工学部 機能分子化学科 准教授 村上 良 先生
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