植物がまっすぐに伸びるのはなぜ?
植物の不思議に細胞からアプローチ
植物が環境変化に対応するために、光の方向に伸びる光屈性や、重力に逆らって伸びる重力屈性のことはよく知られています。しかしある時、茎がぐにゃぐにゃに曲がった植物が見つかりました。通常、植物はまっすぐに伸びるものだと考えられていますが、なぜそうなるのか、その仕組みはまだはっきりとは解明されていません。「植物細胞生物学」では、細胞内の小胞体や細胞骨格を解析することで、不思議がたくさんある植物の仕組みを明らかにしていきます。
「曲がれ」「曲がるな」のバランスで決まる
植物の細胞内では、小胞体などの構造体がものすごい速さで動いています。これを「原形質流動」と言います。原形質流動では、ミオシンというタンパク質が小胞体をつかんで細胞骨格タンパク質の一種であるアクチンレール上を動きまわることで、まっすぐな流れを作っています。
このミオシンに注目し、ミオシンを破壊したシロイヌナズナを作りました。そしてこのシロイヌナズナを光や重力の影響を取り除いた環境に置いたところ、茎がぐにゃぐにゃになってしまいました。ミオシンを破壊したことで、「曲がるな」というブレーキが効かなくなってしまったのです。このことから、植物がまっすぐに伸びるのは、「曲がれ」(アクセル)という性質と「曲がるな」(ブレーキ)という性質の2つがバランスを取った結果だと考えることができます。植物は環境に合わせて、アクセルとブレーキを使い分けているのです。
植物の生存の仕組みを建築にも生かす
植物は厳しい環境を生き抜くためのさまざまな仕組みを持っています。現在、植物分野と建築分野の研究者がコラボして、植物の仕組みを建築の構造に生かすことができないか、また建築物の設計方法をヒントにして植物の仕組みを解明できないかという新たな取り組みも行われています。こうした研究が、今後、建物の耐久性を高める構造や素材などの開発につながることが期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
甲南大学 理工学部 生物学科 准教授 上田 晴子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生物学、植物細胞生物学、植物生理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?