宇宙の謎を解き明かす、X線天文衛星の活躍とは?
目には見えない宇宙の姿を観測するために
宇宙観測を行うとき、私たちの目に見える可視光でとらえられる宇宙の姿は、そのごく一部でしかありません。宇宙ではそのほかにも、電波や赤外線、X線など、さまざまな電磁波が飛び交っています。可視光だけではとらえきれない宇宙の姿を観測するための手段として期待を集めているのが、宇宙から届くX線を観測する「X線天文衛星」です。地上では大気の影響でとらえられない宇宙からのX線も、X線天文衛星であれば子細に観測することが可能になります。
日本はX線天文衛星の先駆的存在
日本におけるX線天文衛星の歴史は古く、1979年の「はくちょう」に始まり、その後「てんま」「ぎんが」「あすか」「すざく」と、合計5台の衛星が打ち上げられてきました。次に日本が打ち上げることになっているX線天文衛星の「ASTRO-H」では、これまでよりさらに広い波長域のX線を観測できるX線望遠鏡が搭載される予定です。
この望遠鏡は、私たちが知っているレンズを組み合わせた可視光の望遠鏡ではなく、反射膜コーティングを施した円筒形の鏡を同心円状に重ね合わせることで、そこに入ってきたX線の角度をわずかに変えて集める仕組みになっています。原理的には身近なデジカメに使われているものと変わらない仕組みのCCDセンサーで撮影を行ったり、液体ヘリウムよりもさらに低い温度で動作するマイクロカロリメーターという観測装置でX線が到達した際の温度変化を検出して、そのエネルギー量を精密に測定したりすることが可能になります。
宇宙の謎を解き明かすために欠かせない存在
超新星爆発やブラックホール、銀河団など、宇宙におけるさまざまな現象にはまだ数多くの謎が残されていますが、それらから発生しているX線をX線天文衛星でとらえて分析することは、宇宙の謎を解明していく上でも大きな足がかりとなります。X線天文衛星による宇宙観測は、宇宙の成り立ちと進化を知る上で、今や欠かせない手段なのです。
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