必要な人に必要な医療を届ける医療保険のあり方とは
サービスを提供するにはお金がいる
社会保障は、個人の責任や努力ではどうにもならない時に、社会全体で助け合っていこうという考え方です。年金・医療・介護・雇用などの分野でさまざまなサービスが提供されています。しかし、サービスを提供するにはお金がかかります。そのため、社会保障を考える際は、「サービスの提供」と「財政」という2つの側面からアプローチする必要があります。例えば医療であれば、国民は健康保険に加入し保険料を支払っています。しかし、同じ保険料を払っていても、病院や医師のレベルが地域によって違うため、受けられる医療に格差が生じています。また、医療費は原則3割が自己負担で、7割は社会保険料負担ですが、実際は足りない金額を国や地方自治体が税金や借金から補充しているのです。
必要以上に病院にかかっていないか
保険適用外の治療もあります。がんの場合、保険適用なら自己負担は約40万円ですが、先進医療だと300万円以上かかると言われています。必要な人が必要な医療を受けられるように、財源を確保するにはどうすればよいのでしょうか。もし、同じ病状で複数の病院をはしごしてしまうと、同じ検査を繰り返したり、同じ薬が処方されたりして、無駄な医療費が増えます。ちょっとした風邪ですぐ病院に行くのも同様です。財政の構造を学び、私たち自身の行動を変えることも重要です。
医療保険がなくなってしまうかも
このような医療の実態は、病院のレセプトデータや、全国消費者実態調査、また企業や行政が実施しているアンケート調査などから分析することができます。諸外国と比較しても日本の医療制度は優れたものですが、高齢化が進み医療費は膨らみ続ける一方で、いつ破綻してしまうかわかりません。
医療に限らず、年金・介護・雇用などの分野でも社会保障が維持できるよう、実態を把握し、財政の面から制度を見直し、発展させることは不可欠です。人生100年時代と言われる今、時代に合わせた施策が求められています。
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甲南大学 経済学部 経済学科 教授 足立 泰美 先生
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