「極限の星」で発生する事象を解明することで、人々の明日が変わる
核融合を続ける恒星は「宇宙の元素工場」
あなたは、「星の最後の瞬間」を想像したことはありますか。
恒星は自らの質量による重力で、常に押しつぶされようとしています。その一方で、水素やヘリウムなどの元素が核融合し続け、爆発による膨張を続けようとしています。重力と、膨張する力とが釣り合っているので、一定の大きさを保っているわけです。
ただ、星の中に存在する元素は無限ではありませんから、いつかは燃え尽きてしまうでしょう。そうすると、自分自身の重力で星がつぶれる「重力崩壊」が発生することがあるのです。
「中性子のスープ」はスプーン1杯1億トン!
重力崩壊が始まると、星はものすごい力で収縮しながら「超新星爆発」を起こし、粉々になったり強大な重力でブラックホール化したり、押しつぶされた原子から陽子や中性子が飛び出したりします。飛び出した中性子が流体を構成し、「中性子星」が誕生するケースもあります。
仮に太陽が中性子星になった場合、地球の約100倍の大きさが半径10kmほどに凝縮されることになるので、自転速度は秒速6万km、発生する磁力は1億ガウス×1億倍、スプーン1杯分の質量が約1億トンなど、ケタ外れの現象が発生します。
100年たって活用されるアインシュタインの理論
極限状態で発生する現象を解き明かすことで、「新しい何か」が生まれます。
例えば、アインシュタインが相対性理論を発表したことで、人々の概念が変わり、物理学以外の分野にも大きな影響を与えました。理論発表から約100年が経過した現代でも、カーナビなどで使われているGPS(全地球測位システム)は、衛星の移動速度と地球上の重力による時間のズレを、相対性理論を応用して補正しているのです。
中性子星という極限的状況や環境を調べることで、これまでにない新しい素材が発明されたり、やがては日常生活の分野にまで応用されたりする日が来ることでしょう。
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佐賀大学 理工学部 理工学科 物理学部門 教授 橘 基 先生
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