光触媒の粉で簡単に水素ができる! 水素社会実現に向けて

光触媒の粉で簡単に水素ができる! 水素社会実現に向けて

次世代エネルギーの水素

SDGsの温暖化対策の1つとして、脱炭素社会の実現が急がれています。数億年かけて地球に蓄積された化石燃料は、あと数十年で枯渇するといわれています。脱炭素社会に向けた再生エネルギーの代表に太陽光があり、おもに太陽光発電として利用されています。ただ、電気はためることができません。
そこで注目されているのが水素です。水素は酸素が結びつく、すなわち燃焼する際にエネルギーを発生します。これを活用すれば、水素をエネルギーとして利用できます。水の燃焼反応では、副生するのは水だけですので、クリーンエネルギーであるといえます。また、水素は圧縮するか、アンモニアなど別の物質に置き換えて蓄積できます。

CO₂ゼロのエネルギーへの課題

水素は現在、工業原料として大量に利用されていますが、その製造には化石資源が使われているため、製造過程でCO₂を排出します。将来のクリーンエネルギーとしての利用を考えれば、化石資源を使わない水素製造法が必要であり、太陽光によって水を分解して水素を取り出す方法がその答えの1つです。
私たち人類が今持っている技術でもこれを実現することができ、それは、太陽光発電で発電した電力を使って水を電気分解する方法です。実際、この技術を活用した水素製造を実用化する研究は世界各国で行われています。

水素社会をめざして

太陽光発電と水の電気分解を組み合わせる方法のほかに、もっとシンプルに水から水素を取り出す方法はないでしょうか。そのような将来技術の1つとして期待されているのが、「光触媒を使った水の分解」です。光触媒はサブマイクロメートルの小さい粒子からなる「粉」で、これを水に入れて光を当てると、その表面で水が分解して水素と酸素が発生します。
光触媒による水の分解反応は、現在のところ紫外線を使わないと効率よく進行しません。紫外線は太陽光には4パーセント程度しか含まれていないため、太陽光の大半を占める可視光線や赤外線を使える光触媒の開発が重要な研究課題となっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

甲南大学 理工学部 機能分子化学科 教授 池田 茂 先生

甲南大学理工学部 機能分子化学科 教授池田 茂 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機能分子化学、エネルギー化学、理工学 

先生が目指すSDGs

メッセージ

授業の一環である「探究」の時間などを活用して、自分が関心のあることは何か、それはどんな学問かを探究して大学や学部選びをしてください。私は、大学入学時は生物学を選びました。「太陽光をエネルギーとして水と二酸化炭素をつくる植物はすごい」と思っていたからです。学ぶうちに、エネルギー変換について追究したかったことに気づき、大学院は化学に進みました。きちんと調べておけば、まわり道をしなくて済んだのかもしれません。しっかりと自分の将来や目標を見据えて、大学や学部を選んでほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

甲南大学に関心を持ったあなたは

国際都市・神戸に位置する本学では、建学の理念「人物教育の率先」を教育の原点とし、ミディアムサイズの総合大学だから実現できる、学部を越えた融合型教育で優れた人材育成を実践しています。現在、岡本(神戸市東灘区)・西宮(西宮市)・ポートアイランド(神戸市中央区)に3つのキャンパスがあり、8学部14学科の多彩な学びを展開。また、全学部の学生がグローバル教育を受けられる融合型グローバル教育や共通教育科目の充実により、異なる学部の学生同士が自然につどい、刺激し合い、融合する学びのフィールドが実感できます。