安全で快適な職場環境の形成に貢献する「産業衛生学」
労働災害から人々を守るための「産業衛生学」
工場や研究所などものづくりの現場では、化学物質や微生物など、人間の健康に有害な物質を扱うことが少なくありません。現場環境によっては、働いている人々は仕事中ずっと、事故や健康被害の危険にさらされている可能性があります。そこで「産業衛生学」では、安全で快適な職場環境を形成するための研究を行っています。具体的には、室内の空気中の化学物質や微生物などの濃度測定法、分析法の開発やリスクマネジメントなど、幅広いテーマを扱います。
三次喫煙被害や悪臭から人々を守る
タバコの喫煙者が吐き出した煙を、周囲にいる非喫煙者が吸いこんでしまう「受動喫煙(二次喫煙)」の健康被害は、喫煙者と同じかそれ以上として知られています。しかしタバコの火が消えて煙がなくなっても、実は目に見えない有害物質が、服や部屋の壁紙などに残ってしまいます。この有害物質を吸い込んでしまう「三次喫煙」によっても、健康被害のリスクがあることがわかっています。そこで服や壁紙に残った物質のにおいを手軽に測定ができる「においモニター」を使って調べることは、望まない喫煙を防ぐことへの貢献につながります。
またタバコだけでなく、有機溶剤など人が不快に感じ、健康被害のある悪臭を消す研究も行われています。悪臭を吸着するためによく使われるのは活性炭ですが、それだけではなく、コーヒーを抽出した後のカス、緑茶の茶殻などの捨てられるものを使った消臭対策も注目されています。
皮膚ガスからわかるストレスの度合い
人は皮膚から「皮膚ガス」と呼ばれる気体を放出しており、これが体臭の原因にもなります。皮膚ガスの成分はその人の体調、年齢、食事などを反映して変化します。近年、人は緊張によるストレスでも、特有の皮膚ガスを発生させることがわかってきました。そこで皮膚ガスから、人のストレスを評価する研究も行われています。
このように多角的な視点から、働く人々の安全や健康を守ることに貢献することが「産業衛生学」の役割です。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
産業医科大学 産業保健学部 産業衛生科学科 助教 樋上 光雄 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
産業衛生学、作業環境管理学、分析化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?