メンタルヘルスを維持するには? ストレスへの向き合い方を学ぶ

メンタルヘルスを維持するには? ストレスへの向き合い方を学ぶ

職場におけるメンタルヘルス

日本の職場では、メンタルヘルスの不調によって休職する人や、生産性が落ちた場面が数多く見られます。また、忙しいときほどコミュニケーションの機会が減るために、人間関係が悪化したり、心の痛みに気づいてもらえず不調になる人が増えたりといった悪循環が生まれています。こうした課題を解決して、人々がより健康的で元気に暮らせるようにしようと研究が行われています。

ストレスによる不調の原因は?

最近の研究で、ストレスにうまく向き合うためには「ストレスマインドセット」が重要であることがわかってきました。厄介な仕事や人間関係など、ストレスの根本的な原因自体はなくなりません。しかし、向き合い方を変えれば心や体のストレス反応が軽減することが科学的に明らかになっています。例えば、テスト前の大学生を対象にした実験があります。彼らは「テストで失敗したらどうしよう」とストレスを感じており、そのままでは力を発揮しきれません。しかし実験でストレスを感じるのは悪いことではない、適度なストレスはいいパフォーマンスを生む、と教えられた学生は、伝えられなかった学生と比較してテストの点数がよかったのです。ストレスをある程度前向きにとらえることができれば、逆に活かしてパーフォーマンスを向上させることができ、メンタルヘルスも悪化しにくくなるのです。

ロールプレイから学ぶ

ストレスマインドセットを養うために、架空のシナリオを使ったグループワークが行われています。仕事をむちゃ振りしてくる上司と会話をする、言うことを聞かない部下と仕事を進めるなど、参加者が身近に感じられる物語を通して、参加者は登場人物たちになりきって、どのようにストレスを感じているのか、言動をどう改善すべきかを考えて参加している同僚たちと話し合います。すると議論をするうちにストレスの原因やその意義に気づいて、適切な対処法を学べるのです。業種ごとに適したシナリオの内容やグループワークの進め方などを見つけようと、幅広い職場での実践が試されています。

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先生情報 / 大学情報

産業医科大学 産業保健学部 産業衛生科学科 教授 河村 洋子 先生

産業医科大学 産業保健学部 産業衛生科学科 教授 河村 洋子 先生

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ヘルスコミュニケーション、行動科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私はガンジーの「変化を求めるなら、自分自身がその変化になりなさい」という言葉が気に入っています。何かを変えたければ他者を変えようとするのではなく、まずは自分自身を変えるためのアクションを起こしなさい、という意味です。あなたはまだ若く、なんでもできる可能性を秘めています。目標の達成には時間がかかるかもしれませんが、自ら行動を起こして地道に続け、さらに周りに思いを伝えるうちに形になっていくはずです。粘り強さと前向きな気持ちをもって、目標に向けて取り組み続けてほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

産業医科大学に関心を持ったあなたは

―「働く人」の健康と環境を医学の目で見守ります。―
 産業医科大学は、産業医学の振興と、産業医及び産業保健従事者の養成を目的として1978年福岡県北九州市に創設されました。医学部医学科、産業保健学部看護学科・産業衛生科学科の2学部3学科で構成される医科大学です。本学は、医学一般についての教育・研究・診療を基に、産業医学及び産業保健に関する特色ある教育・研究を実施し、優れた人材を数多く社会に排出するとともに、関連分野に関する研究を進め、また地域医療において医療に関する中核的役割を担っています。