看護師が生き生きと働ける職場環境とは
看護師のウェルビーイング
診療の補助や患者の療養のお世話をする病院看護師は、夜勤が伴うこともある忙しい労働環境で働いています。一方で、患者により良いウェルビーイングを提供するには、看護師自身のウェルビーイングが重要です。そのため、多くの医療施設では勤務環境を整えるためのさまざまな制度の導入を行っています。
「ソーシャル・キャピタル」とは
しかし、制度を多く導入することが、看護師全体のウェルビーイング向上につながるとは限らないという研究結果が明らかになりました。例えば、子育て中でも働きやすくするために時短勤務や夜勤の免除制度を取り入れた場合、制度の対象となった看護師のウェルビーイングは向上するでしょう。しかし、病院で必要な看護業務の総量は変わらないため、対象外となった看護師がその業務を引き受けることになり、その看護師たちはウェルビーイングが上がらないという二極化が起こります。特定の対象のための制度を充実させるほど、看護師の分断を招きかねません。
このような課題を解決するためには、単に制度を整えるだけでなく、組織全体でのウェルビーイングを向上する文化を作り出すことが重要です。やむを得ず休んだとしても「お互い様」と言えるような信頼関係や人間関係そのものが、組織においての資源になると考えられます。この概念を「ソーシャル・キャピタル」と呼びます。職場環境の現状について心理学的な尺度を用いた調査(質問紙調査)を行ったところ、ソーシャル・キャピタルが高いと認識された組織は、多職種連携協働が促進され、医療安全風土も高い傾向がありました。職場の良好な文化が、業務の質にも影響を与えることがわかっています。
看護師不足解消のために
日本は看護師不足の現状があり、さらに団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降には、問題がより深刻化すると言われています。看護師が長く安定的に働くためにも、ウェルビーイングの向上を支える組織文化の構築が課題であり、その手助けとなるアプローチは引き続き研究が必要です。
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