高性能になってもスマホが大型化しないのは「薄膜」のおかげ?!
スマホの心臓部は「薄膜」で作られている
急速に高性能化・多機能化するスマホですが、その高性能化を支えているのは、「薄膜(はくまく)」を均質に作る表面技術です。例えばスマホ内部のCPU(中央処理装置)は、基盤上に1ミクロン以下の薄さの膜で回路が作られており、そこを電気が流れています。より高性能化するためには、回路もどんどん複雑になりますが、製品を大型化するわけにはいきません。そこで、より薄く精密な薄膜を用いた回路を三次元的に積層する技術が生まれ、現在も進歩しています。
液体を使うか気体を使うかで膜の性質も変わる
電子機器、装飾品、自動車部品など、私たちの周囲には「めっき製品」がたくさんあります。めっきも表面技術の1つで、金属イオンを含むめっき液の中に処理したい部品などを入れ、表面に薄膜を形成します。一方、CPUなどに用いられる薄膜は、シリコン化合物など膜になる成分を含むガスを真空中で反応させ、回路基盤などの表面に堆積させます。より微細で複雑な回路が求められるようになってきた現在、高純度な膜を均一に堆積できる薄膜技術が求められています。
「ナノ」の世界では金属の性質が急変
動画、音楽などコンテンツの多様化にともない、スマホやタブレット類も、さらなる大容量化と高性能化が求められるでしょう。そのニーズに応えるため、3ナノという超極小サイズの回路を作る研究が進んでいますが、製造コストは大幅に上昇します。そこで現在、製造コストが安い既存技術で作れるチップを20ミクロンという薄さに研磨し、それを10層ほど積み重ね、処理できるデータ容量を大きくする研究も進められています。同時に、金属を10ナノ以下まで細く・薄くした際の性質の変化や、目的に合った素材の研究も進められています。例えば銅は、電線の素材としてはごく一般的ですが、10ナノあたりから急激に抵抗値が上昇するため、最先端電子回路の配線材料には使用できないと言われています。電子機器類の高性能化ニーズが続く限り、薄膜・表面技術の研究に終わりはないのです。
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大阪公立大学 工学部 化学工学科 教授 齊藤 丈靖 先生
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