多分野の技術が融合し、商品誕生
ICとHDDがパソコンの中枢
今のパソコンは、半導体集積回路(IC)とハードディスク(HDD)で成り立っているようなものです。ICが情報を処理し、HDDが情報を記憶しているからです。
では、何がICの中で動いて情報を処理し、何がHDDで情報を記憶しているのでしょうか。それは、電子です。処理にも、記憶にも、マイナスの電気を帯びている電子の性質を利用しています。HDD内には、微細な「磁石」が並んだ円盤が入っています。IC内で電子が動いて処理された情報は、HDD内でこの磁石に置き換えられて保存されます。
今、ICとHDDは別々に使われていますが、処理と記憶の機能を一緒に行えるようになる技術「スピントロニクス」の開発が行われています。そして、この新技術を使えば、パソコンでできることがほかの機械でもできるようになるかもしれません。
パソコンの中枢をほかの機器に活用
スピントロニクスの技術が確立されれば、一つの装置があるだけで、さまざまなことができてしまいます。パソコンや携帯電話はもちろん、情報家電などの生活が飛躍的に便利になることも考えられます。そして、この技術で作られた装置は、あらゆる精密機械にも活用されることになるでしょう。それは、普段の生活では目に見えないところでの利用も含まれています。
では、その装置はどういう形のものになるのでしょうか? 携帯電話のようなものかもしれないし、カードのようなものかもしれません。現段階では、まだわからないところです。デザインやサイズなどは、スピントロニクスの技術者が決めることではありません。それは、ほかの分野の技術者によるものです。
新たな製品は、さまざまな分野の技術が融合することで生み出されます。もちろん、メーカーや消費者の要望を取り入れることも必要です。しかしながらスピントロニクスが、未来の精密機械の中核となる技術になることは間違いありません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東北大学 電気通信研究所 教授 大野 英男 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
電子工学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?