ものづくりでも大活躍! 安全で持続可能な材料をプラズマ技術で
プラズマ技術で薄膜を作る
物質の第四の状態であるプラズマを利用した技術は、ものづくりの現場で活躍しています。例えば、スマートフォンに入っている半導体チップの製造過程で「薄膜」を形成するのにプラズマが用いられます。まず、真空容器に薄膜の材料(ターゲット)と基板を設置し、真空ポンプで空気を抜いて真空状態を作ります。次にアルゴンガスを入れ、ターゲットに電気を加えて放電させると、電子が高速に動き回るプラズマ状態になります。このプラズマによってアルゴンがイオン化され、アルゴンイオンがターゲットに衝突します。するとターゲットの元素が飛び散り、基板上に積み重なって薄膜が形成されるのです。
代替材料の必要性
スマートフォンやパソコン、電気自動車などには、レアメタル(希少金属)という手に入りにくい資源が使われています。これらの製品を作り続けると、いつかは資源が枯渇するかもしれません。そこで、レアメタルを使わずに、たくさんある材料で同じ性能の製品を作ることが理想です。例えば、太陽電池の透明電極には酸化インジウムスズ(ITO)が使われていますが、これの代わりに資源が豊富な酸化亜鉛(ZnO)が注目されています。ZnOだけでは電気を通しませんが、ほかの材料と組み合わせることで、透明で電気をよく通す性質のものを作る研究が進められています。
コストと手間を削減するには
ZnOを代替材料とするためには、薄膜の作製方法を改良する必要があります。通常の方法では、薄膜作製に固体ターゲットを使用しますが、これは高価であり、材料を変更するたびに時間と手間がかかります。そこで、粉末のまま薄膜を作る方法が試されています。粉末ターゲットは粉を混ぜ合わせるだけで作製できるため、コストを抑え、短時間で簡単に実験を行うことができます。ただし、粉末ターゲットを使用した研究はまだ報告例が少なく、再現性と品質の向上にはさらなる研究が必要です。
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