レーザーで飛ぶ? 未来型エンジンをめざす航空宇宙工学

レーザーで飛ぶ? 未来型エンジンをめざす航空宇宙工学

レーザーの光で宇宙へ!

「航空宇宙工学」の中の「航空宇宙推進工学」という分野では、飛行機やロケットなどの推進機(エンジン)をどのように作るのかを研究しています。現在、日本の「H-IIロケット」などの宇宙ロケットのエンジンは、主に水素と酸素、またはガソリンなどを燃焼させ、それを原動力として推進力を得ています。こうした従来型のロケットとはまったく異なる、レーザーの光でロケットを飛ばす「レーザー推進」の研究が、日本やアメリカなどで2000年頃から進められています。

ロケット発射実験が行われた「レーザー推進」

SF的にも思えるレーザー推進ですが、実際にアメリカでは1998年にレーザーによるロケット打ち上げ実験が行われ、短距離ながら打ち上げに成功しています。まだ技術的にさまざまなハードルがあるものの、画期的なシステムであることは明らかです。レーザー推進にはいろいろな方式があり、アメリカで行われた実験のロケットは、レーザーの光でまわりの空気を暖めて進む方式で、燃料を搭載しないタイプでした。
日本では地上から照射したレーザーの光によってロケットの燃料を加熱して推進力を得るタイプの研究が盛んです。これまで日本国内に強力なレーザー装置がないことが研究の壁になっていましたが、最近、企業に試験用の大型レーザーが導入され、研究は新たな段階を迎えつつあります。

新たな可能性を秘めた「プラズマ推進」

近年、飛行機のエンジンを、ジェット燃料を使うタービンから、環境にやさしく静音性に優れた電気モーターに置き換える動きが見られます。また、こうしたシステムとはまったく異なる「プラズマ」による飛行の研究が、日本やヨーロッパ、中国などで始まっています。これは、放電で加熱した空気を噴出させて推進力にするというもので、新たな可能性として注目されています。
このように推進機の分野でも、10年後、20年後といった近い将来ではなく、未来に必要となる技術を探究しているのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 森 浩一 先生

大阪公立大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 森 浩一 先生

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航空宇宙工学

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メッセージ

宇宙工学の技術において、日本は世界トップレベルです。アメリカや中国に後れをとっているイメージがあるかもしれませんが、日本人の繊細さが研究に生かされ、先端的な研究が進められています。もしあなたが、ものづくりが好きで、自分のアイデアを形にしたいと考えているなら、宇宙工学をめざしてみませんか。ここには世界で活躍できるチャンスがあります。
理系にとっても、論文を書くことや研究仲間とのコミュニケーションのベースとなる「国語力」は大切です。普段から本を読んで国語力を身につけておけば、将来きっと役に立ちます。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。