豊かな未来をもたらす高分子研究
柔らかいのも固いのも高分子の特性
高分子(ポリマー)とは数千以上の原子からできている分子のことで、プラスチックをはじめ日常で目にする多くの物が高分子からできています。ゴムのような柔らかい高分子もあれば、防弾チョッキの繊維のように丈夫で固い高分子もあります。そのような多様な特性を持つがゆえに、高分子は身の回りでたくさん利用され、現代生活においてなくてはならない物質となっています。プラスチックは自然界で分解されにくく、生態系に影響を及ぼしかねないことから、プラスチックのごみ問題ではマイナスイメージでとらえられていますが、今後はこのごみ問題を解決するような高分子も開発され、人類にさらに豊かな未来をもたらす材料として期待されます。
私たちの体にも生活にも欠かせない存在
プラスチックなどは人間が作り出した「合成高分子」からできていますが、私たちの体内にもたくさんの「生体高分子」が存在します。タンパク質やDNAがその生体高分子ですが、私たちの生命維持や遺伝情報を担っている重要な物質です。タンパク質は20種類のアミノ酸がつながった高分子、DNAは4種類のヌクレオチドがつながった高分子で、各構成単位のつながりの順番によって生命活動における機能や遺伝情報が規定されています。したがって、生体高分子は私たちの健康や医療とも密接に関係しています。
医療や生活に役立つ高分子研究
抗がん剤を高分子で包んでがん細胞にだけ送達させることで、抗がん剤の副作用を軽減する「ドラッグデリバリーシステム」の研究も注目を浴びています。これは医療に高分子研究が生かされている事例であり、近い将来実用化が見込まれています。ほかにも、洗濯洗剤に使用されている酵素も高分子からできていますが、これに似せた「人工酵素」の研究が進めば、もっと汚れが落ちる画期的な洗剤が生まれる可能性もあります。
将来的に、このような高機能性高分子の研究が進むことで、さまざまな問題の解決に寄与し、私たちの生活がさらに豊かになっていくと考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪大学 理学部 化学科 教授 佐藤 尚弘 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
高分子科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?