情報ネットワークの鍵を握る「エッジコンピューティング」とは?
クラウドコンピューティングの課題
スマートフォンやパソコンは、主要な情報をデータセンターに集約する「クラウドコンピューティング(以下CC)」によって利用することが、今ではすっかり一般的になりました。しかし、CCが必ずしも万能ではないことも明らかになってきています。スマートフォンやパソコンだけでなく、スマートウォッチやIoT家電など、情報ネットワークにつながる端末は増え続け、情報のデータサイズもますます肥大化しています。こうなると、すべてをクラウドと呼ばれる外部サーバに集約するCCでは、通信に遅延が生じてリアルタイムでのやりとりが難しくなることがあるほか、データの通信や管理にも多くのコストがかかってしまいます。
ネットワークの「端っこ」でデータを処理する
そこで注目されているのが、「エッジコンピューティング(以下EC)」です。「エッジ」とはネットワークの端っこを意味し、私たちが端末を利用している場面に物理的により近い場所に情報を扱う装置を配置し、分散して処理を行う仕組みを指します。ECを活用すると、CCが苦手なリアルタイム性の要求される状況でのデータ処理がスムーズになったり、その状況で必要な情報だけを収集することでデータ管理のコストを抑えたりすることが可能になります。例えば、車の自動運転の際には、各種センサで収集した膨大なデータを逐次処理しながら車を制御していく必要がありますが、リアルタイムでの制御が難しいCCよりも、ローカルに近い環境でデータを処理するECの方がより適していると考えられます。
クラウドとエッジは補完的な関係
CCとECは、どちらか一方だけを使うというわけではなく、それぞれの長所・短所を見極めたうえで、目的や状況に応じてより適した方を用いるという、補完的な関係になると考えられています。両者をいかにうまく組み合わせていくかが、これからの情報ネットワークの道筋と言えるでしょう。
参考資料
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大阪大学 大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 准教授 荒川 伸一 先生
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