現実システムの効率的な運用をめざす「信頼性工学」
コストをかければ信頼度が高められる?
発電所と各家庭をつなぐ電力ネットワークを作る際、考慮しなければならないことの1つに、送電ケーブルをどのように設置するべきかという問題があります。当然、数多く設置すれば、それだけ信頼性・安全性が上がりますが、むやみに数を増やせば膨大なコストがかかり、現実的ではありません。信頼性工学では、信頼性の基準を満たした上でコストをなるべく抑えるにはどうすればいいかといった問題を数理的に考えています。
正常か故障か、だけでなく
東日本大震災をきっかけに原子炉の安全性が問われたように、インフラをはじめとする社会のさまざまなシステムにおいて、事故などで被害を受けた際にも安定的に稼働するような信頼性が求められています。昔からの考え方では、システムの状態を判断するのに、正常か故障かという2つの観点しかありませんでした。しかし、現実はもっと複雑です。そこで、劣化や部分的な故障など複雑な状態を数値化し、どの状態がどのくらいの確率で起こりうるかを計算します。
信頼性が大きく関わってくるのは、壊れにくいかどうかという「評価」、そして、「設計」と「メンテナンス」の部分です。メンテナンスの例を挙げると、自動車の車検はどの程度の周期で行うのが望ましいのかなど、コストと効率性を考える、いわゆる「最適化」の問題と言えるでしょう。
「モデル化」によって汎用化できる
信頼性工学(特に、信頼性数理)を研究する上では、「モデル化」といって、具体的な事象を数理的に単純化していく工程が必要です。それによって、個別の事案だけでなく、幅広い分野においてその理論を共有できるようになります。送電ケーブルや鉄道路線網、コンピュータネットワークの問題などに、同じ理論が適用できるのです。
モデル化にあたっては、具体的な現象をなるべく単純化すれば処理しやすいのですが、単純化しすぎると現実の複雑な問題に対応できなくなってしまいます。そのバランスも研究上の課題の1つとなっています。
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東海大学 情報理工学部 コンピュータ応用工学科 講師 中村 太信 先生
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