映像メディアにおける「音と映像」の調和について考える
映像における「音」
映画やテレビ番組といった映像メディアは、映像に音が加えられることで完成します。この場合の「音」とは、せりふや物語の中で発せられる音、つまり登場人物にも観客にも聞こえる「ダイジェティック・サウンド」と、ナレーションやアンダースコア(映画音楽)といった、観客にしか聞こえない「ノンダイジェティック・サウンド」に大別されます。制作者は、音声を使って物語を進行させて、映像作品のテーマやコンセプトに合う音を選択しながら場面の雰囲気をつくることで、受け手とのより良いコミュニケーションを図っています。
音と映像の主観的調和
映像作品に使われる音は、映像と調和する必要があります。最も基本的な調和は、音と映像の出現が時間軸上でずれることなくぴったりとシンクロ(同期)する「構造的調和」です。もう一つは、例えば悲しい場面には悲しい音楽を流すといった、視覚的な印象と聴覚的な印象を整合させる「意味的調和」です。また、例えばある物体が上昇する映像にピッチが上昇する音を一致させる「音と映像の変化パターンの調和」もあります。
こうした映像と音の組み合わせによって受け手が感じるまとまりの良さを「主観的調和」といいます。主観的調和の度合いは、さまざまな映像と音を組み合わせて、視聴者が受けた印象を評価・測定する実験によって明らかにできます。
知覚的処理との関係
私たちは身の回りの音=聴覚情報を、モノや風景などの視覚情報とともに受け取ります。それらが脳の中でどのように処理されているのかは完全に解明されていませんが、音と映像のまとまりの良さ、つまり音と映像の主観的調和が密接に関係することがわかっています。また、映像作品において、音と映像の主観的調和がとれている作品ほど高い評価を得ていることもわかっています。このように、視聴覚情報の融合過程とそのメカニズムについて研究し、人間の情報処理というブラックボックスの仕組みを解明することは、より人の心を打つ映像作品をつくる上で大きな意義をもっているのです。
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駿河台大学 メディア情報学部 メディア情報学科 教授 金 基弘 先生
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