石垣島のマングローブが支える共生システムを解き明かす
汽水域に生息するマングローブ
マングローブとは、陸と海の境界、淡水と海水が混ざり合う「汽水域」に生えている樹木の総称で、熱帯や亜熱帯地域で見られます。多くの観光客が訪れる沖縄・石垣島では、マングローブの茂る河川を下っていくと、サンゴ礁や、海草・海藻が集まる藻場に出ます。人間が生活や農業、工業で使った水は、下水処理場で浄化されてから川や海に流れていきますが、大雨で畑にまいた肥料が土砂と一緒に川に流れ込んでしまうなど、浄化しきれないケースもあります。マングローブやサンゴが生きる沿岸部は、陸からの負荷が集まりやすいのです。
見えてきたマングローブの役割
沿岸部に急激に土砂が流れ込むと、海水が濁り、サンゴと共生する褐虫藻が光合成できなくなり、サンゴが弱ってしまいます。また、土砂に含まれる窒素やリンによってプランクトンが大量発生し、富栄養化を引き起こしてしまいます。マングローブは、こうした陸からの負荷を受け止め、過剰な量が海に流れ込むのを防いでいます。
2007年から約10年間行われた、石垣島のマングローブ林の調査では、潮の満ち引きや雨の前後などでの水質の変化が分析されました。そこでも、マングローブが陸からの負荷を和らげていることが証明されました。コンクリート護岸の河川では、雨が降ると急激に水が濁り、水中の浮遊土砂量が増大しましたが、マングローブのある河川では、水は緩やかに濁り、ピーク時の浮遊土砂量も、コンクリート河川と比べて低くなっていたのです。
マングローブから考える、人と自然との共生
石垣島では、マングローブを巡るエコツアーが人気です。一方で近年、川や海に流れ込んだプラスチックごみが、生態系に及ぼす影響が心配されています。島のマングローブからも、プラスチックが砕けて小さな粒となった「マイクロプラスチック」が見つかっています。その影響を調査で明らかにし、どのようにして観光業と自然保護を両立させるのかなど、人と自然との共生について考えていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 建築都市学部 土木工学科 准教授 寺田 一美 先生
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