世界の地下空間を駆け巡る、日本のトンネル技術
世界で活躍する日本の「シールドトンネル」
日本のトンネル技術は世界屈指と言われています。特にシールド工法は完全に世界一で、日本の技術が世界中で生かされています。
例えば、英仏海峡トンネル、トルコのボスポラス海峡などで、日本の「シールド工法」が採用されています。規模が大きく、長距離を掘ることが必要なとき、地盤がゆるい場所や、地質や形態が複雑な場所を掘るときなどに、日本の高度で緻密なシールド工法が有効なのです。作業の安全性や信頼性が高いという点も、日本の技術の大きな特長です。
掘ってるはしからすぐトンネル!
シールド工法とは、掘削(くっさく)をしながら同時にセグメントと呼ばれる円弧状のブロックを組み上げ、トンネル本体を構築していく方法です。「開削(かいさく)」と言って地表から溝を掘り、後からふたをするように地表を閉じる工法もありますが、それに比べるとシールド工法は、地上の環境に影響を与えにくく、深いところを長く掘ることができます。トンネル周囲の土の圧力がトンネルの内部空間を支えるため、構造的にも強くなるのです。
シールド工法はフランス人が考案し、1825年にイギリスで最初に導入されました。日本では1920年代に採用され、1960年代以降には、先端の掘削機と後方の作業スペースが分離されて、後方に土砂や地下水が流入しない安全な工法として日本で確立されました。1980年代以降は、トンネル断面の大型化・長距離化・高速化・形の多様化に対応できる高度で緻密な方法が開発され、それは現在も続いています。
複雑な地盤を持つ日本で発展
なぜ、この分野で日本が世界をリードできるのでしょうか。それは、日本の複雑な地質と地盤に対応するために技術者が努力を重ねた結果なのです。また、シールド工法は地上空間を保全したまま工事ができるため、都市の地下構造物(地下鉄・下水道・ガス管・貯水施設など)の建設に適していることも、日本で高度化が進んだ背景としてあげられます。そこでは、細かいところにも気を配るという日本人の繊細な気質が貢献したことも見逃せないでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 西村 和夫 先生
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