海底で静かに起きているミステリー「海底乱泥流」の謎を探る!
遠く離れた海底に川砂
インド洋の真ん中、海岸から3000km離れた領域に、バングラデシュ由来の土砂が堆積しているという事実は、長い間、地質学的なミステリーでした。実は「海底乱泥流」と呼ばれる、海底で発生する泥の流れの仕業です。海底に堆積していたバングラデシュの川の土砂が土砂を運びながら海底を3000kmも移動し堆積したという、事実が明らかになったのは、この100年ぐらいのことです。世界中で起こっている海底乱泥流ですが、その規模や頻度、地質構造など、その実態はあまりよくわかっていません。
海底乱泥流の運動メカニズムを再現実験
海底乱泥流のさまざまな謎にせまるためには、まずその運動メカニズムを知る必要があります。そのために大型水槽で乱泥流の流れを再現した実験が進められてきました。具体的には、水の入った水槽の中で、川の砂と粘土が混じった泥流を再現し、流れの速度分布の観測が行われています。
こうした研究から、乱泥流は同じ形のままで下流方向へ流れ、しかも、いったん流れはじめると、長時間継続することが確認されています。また水と再現した泥流とが、ごくわずかな密度差であっても乱泥流になることも明らかにされました。
海底乱泥流が引き起こすリスクとは?
謎の多い海底乱泥流ですが、すでにいろいろなリスクを引き起こすことが明らかになっています。例えば、地震や台風などが原因で起こった海底乱泥流が海底ケーブルを切断してしまい、通信障害が起きています。そのほか地震の後に、海底地震計が流されたという報告もあります。
今後、必要性が増してくる海底資源開発や洋上発電のために、海底に計測装置などを設置する際には、海底乱泥流による突発的なリスクの管理を進める必要があります。また防災面からも、ハザードマップの作成などに向け、海底の動きを高精度に観測することが重要になってくるでしょう。乱泥流の運動と土砂の運搬との関連など、この分野での多くの新しい研究が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 准教授 野村 瞬 先生
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