船舶の津波被害の防災・減災を目指して

船舶の津波被害の防災・減災を目指して

津波災害と隣り合わせの国、日本

日本は四方を海に囲まれ、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの四つのプレートの上に位置するという特殊な国です。津波はこれらのプレート同士の急激なずれによる海底地震や海底地すべり、海底火山の活動などによって発生します。
津波は一度発生すると収束するまで何度も陸域に押し寄せます。陸域に近づくにしたがって速度は遅くなりますが、波高(津波高)は高くなります。そして、陸域に遡上した津波の高さ(遡上高)は津波高の2〜4倍にもなります。東日本大震災で発生した津波では、40mを超える遡上高が記録されています。

津波に遭遇してしまったら

日本は、これまでも度重なる津波被害を経験してきました。そのため、津波警報・注意報や海洋観測監視システムといった予測手段や、津波ハザードマップや津波避難マニュアルといったソフト的対策、防波堤や防潮堤、防潮林、津波避難タワーといったハード的対策など、さまざまな津波対策が講じられています。
しかしながら、覚えておいて欲しいことがあります。それは、もしあなたが津波に遭遇してしまったら、“取るものも取らず、肉親にも構わず、各々ばらばらに高台に逃げる”、ということです。これを「津波てんでんこ」といいます。どれほど津波対策を講じても津波を前にしたら高台に逃げるしかないのです。

港湾内の船舶を津波から守る

津波が発生すると船舶をはじめ、港湾内にも甚大な被害がもたらされます。船舶が津波に巻き込まれると、船舶自体が被害を受けるだけではなく、津波とともに押し流された船舶が陸域の建築物に衝突したり、漏れ出た燃料によって火災が発生したりといった陸域への二次・三次災害をもたらす可能性があります。
船舶海洋工学の分野では、岸壁に係留したまま船舶の津波被害を防災・減災することができるように、船舶をつなぎ止める係留索(ロープ)の本数を増やしたり、係留する岸壁を津波とともに浮き上がる浮体構造にしたりといった防災・減災対策が研究されています。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋工学部 海事システム工学科 准教授 増田 光弘 先生

東京海洋大学 海洋工学部 海事システム工学科 准教授 増田 光弘 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

海洋工学、船舶海洋工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

海は地球表面の70%以上を占め、日本は海に囲まれた国です。あなたは海についてどれだけ知っているでしょうか?海は海上物流や漁業の場であるだけでなく、多様な海底鉱物資源や再生可能エネルギーなど、多くの可能性を秘めています。そう、海にはまだまだ多くの謎や探求すべき課題があるのです。
あなたが少しでも「海」に関心を持っているなら、陸上で起こっていることだけでなく、海にまで視野を広げてみてください。そうすれば、高校卒業後の進路や将来設計などに、新しいひらめきが生まれるかもしれません。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。