エアガンで人工地震を起こして海底下を調査
地震波を送って地下を探る
地面の下の地層の構造は地震波を解析することで調査できます。しかし、自然に起きる地震を待っているわけにはいきません。そこで、人工的に地震波を送る方法が開発されました。地表から放たれた人工的な地震波は、地層の境界で反射します。反射して地表に戻った地震波の走時(到達時間)や波形を地震計がとらえ、それを分析することで、地下の物質の速度や密度などの状態を把握できるというものです。
エアガンの音波が地震波に
海底の構造を調べるときも同じです。海底地層の調査船は地震波を発生させるエアガン震源と、反射した地震波を観測するストリーマ―ケーブルと呼ばれる測定機器の両方を船尾から曳きながら航行します。エアガンからは圧縮した空気を発射し、その衝撃が水中を音波として伝わります。音波は海底に到達すると地震波と呼ばれるようになり、異なる性質の地層の境界で反射し海底から再び水中に戻ります。戻ってきた水中の音波をストリーマーケーブル内の音響マイクが拾い、船上でデータ解析をします。大学が所有する調査船では、海底より2~3km下の地盤の調査が可能ですが、より大規模の海洋探査船となると、地殻の下のマントルまで達する20~30km下までを調査することができます。
二酸化炭素抑制の秘策
海底の地下構造調査は海底断層の調査や油田などの鉱物探査に欠かせません。近年、二酸化炭素(CO₂)の大気中への放出を抑制するためのCCS(二酸化炭素地中貯留)という手法に関心が高まっています。これは、化石燃料や地下水を長期間閉じ込めていた海底下の安定した地層にCO₂を貯留するものです。海外においてはすでにたくさんのCO₂地下貯留プロジェクトが実施されています。日本でも2019年から北海道の苫小牧(とまこまい)沖で実証試験が進められ、製油所の排出ガスを圧縮し、海底下3000メートルまでの地層に送り込んで封じ込めることに成功しました。こうしたCO₂を貯留する地層を探す際にも、地震波を使った地下構造調査が役立っているのです。
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東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 准教授 鶴我 佳代子 先生
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