海を総合的に理解する! 「水圏環境教育」の重要性
海は「水圏」で考える
漁業は日本の食を支える大事な産業のひとつですが、その一方で日本人の海や河川などの「水圏」に対する意識は低いと考えられています。その一因に、日本では公共政策としての「水圏環境教育」が足りないという現状があります。海を考えるには川や森の水の循環も含めた水圏全体でとらえる必要があります。そのために提唱されているのが、水圏環境や資源について広い知識を活用し、責任ある行動をとれるようにするための、「水圏環境リテラシー」の教育です。
「里山」「里海」が世界をリードする
アメリカでは海洋教育が進んでいますが、その意識には日本人と異なる点があります。日本では、海は漁業従事者にとっての仕事場、食料生産の場の意味合いが強いのですが、アメリカ人にとっては、海は科学的な探究の場であり、レジャーの場でもあります。このように、国によって、あるいは個人の立場によっても海のとらえ方は違います。日本には日本ならではの環境教育があるということです。
日本では、昔から「里山」という、人間と自然とが共生した状態を表す言葉があります。自然保護について、以前は「人間が一切自然に手を加えないほうがいい」という考え方が主流でした。しかし、人間がある程度手を加えることで自然の循環がスムーズにいくことも多いということがわかってきています。近年では「里山」「里海」という日本発の概念が、世界で最も進んだ考え方であるとも言われています。
環境教育は地道な活動から
各地で、地域の活動として環境教育への取り組みが進められています。例えば、使い捨てカイロの中身を東京湾のヘドロの中に沈めて海を浄化しようという活動が、東京都港区で行われています。カイロの主な材料である鉄分を団子状にして、硫化水素などの汚染物質を吸着させるのです。こうした活動を地域の中高生や一般の人たちと行うことが、科学的な探究のプロセスを学ぶとともに、地域の課題解決とその意識を高めることにつながっています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋政策文化学科 教授 佐々木 剛 先生
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