船が自動運転になると大変なことって? 事故を防ぐための法整備
船の自動運航実現に向けた法律の改正
船でも、車と同じように自動運航技術が開発されています。実現した場合、自動運航船が今の海上の法律にどのような影響を及ぼすのか2018年頃から検討が始まりました。この法律に関する問題は世界規模の問題でもあります。船は世界中を航行するので世界基準で法律が定められているからです。国際的な法律の改正は難しく時間もかかるため、自動運航技術が実用化される前に改正すべき点を研究しなければなりません。
海上の交通ルールは大ざっぱ?
海上には道路がないので船は自由に動くことができます。しかし、すべての船が自由に動いてしまうといつ衝突してもおかしくない危険な状況になってしまいますので、海上にも道路交通法のような法律が存在します。この法律は、海上で船が衝突しそうになる代表的なシチュエーションにおいて船員が船をどう動かすべきかを定めています。しかし、刻々と状況が変化する海上においては、法律を順守しているのみでは危険を避けきれない場合もあります。そういった場合、経験や知識等、船員個人の能力によってその危険を回避する必要があります。「最終的には個人の能力次第である」というと大ざっぱに聞こえるかもしれませんが、自由に動ける海上だからこそ、船員個人が安全を第一に考えながら行動を決定する必要があります。
人と自律運航船が共存するために
海上における安全は、船員個人が安全を第一に考えることで成り立っているため、船員によって船の動かし方が違う場合もあります。この動きのパターン化のために操船シミュレータを使った実験を行ったところ、経験や年齢、役職が近い船員でも船の動かし方はバラバラでした。海上の交通ルールは大ざっぱなので、船の動き方をパターン化することが難しいのです。自動運航船が海上を安全に航行するために、船員個人の能力に頼ってきた部分をどうするかを考える必要があります。どうすれば人も自動運航船も安全に航行できるか、進歩した技術を社会で実用化するためにも法律などの検討が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海洋政策科学部 海技ライセンスコース 航海学領域 助教 猪野 杏樹 先生
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