船が安全に港に着くために コントロール技術の開発

船の離着桟技術は日本が最先端!
近年、自動車や飛行機などの自動運転・運航技術が話題となっています。水上や水中を進む船も例外ではありません。船の操縦の中でも特に難度が高いとされているのが、港や桟橋に船を着ける・離れる「離着桟」という動作です。タンカーやコンテナ船のような巨大な船体でも、最後は秒速5センチというスピードで繊細に操作する必要があるほどです。さらに、雨や風、波や潮の動きなどの影響も操縦を難しくしています。この離着桟の動作を自動化する研究は、日本では1980年代から行われていて、世界の海運国家の中でも最先端を走っています。
船員さんの負担を減らすために
船員さんの業務はかなりの重労働となるため、なり手が少なく、世界的にもその労働環境は社会問題となっています。しかし、専門の知識や技術、そして経験を必要とする点が多く、自動化にあたっても車や飛行機とは違う視点から考える必要があります。また、車や飛行機と違い、船はほとんどが一品生産となるため、その動きや操作感は船ごとに異なります。これらの複雑な条件を考慮したうえで臨機応変に対応できる自動運航の開発は非常に困難ですが、自動化によって船員さんの業務負担軽減が期待できます。
突然のとびだしなど不確定要素への対応
船の自動運航は、さまざまな条件下での制御方法をコンピュータのシミュレーションでテストします。多くの場合で制御可能なモデルが作成できたら、実験用の池やプールで模型を使って実際に動作するかを試すこともあります。また、安全な動作の最適解を見つけ出すためには、工学だけでなくほかの関連分野との共同研究も必要です。
今後は、突然航路に別の船がとびだしてきた場合など、不確定要素に対する回避策を念頭に置いた「かもしれない運転」の開発に焦点があたっています。人の負担を減らし、人を介さずに行われる安全な船の運航をめざして、制御技術の開発が進められているのです。
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大阪大学工学部 地球総合工学科 船舶海洋工学科目 教授牧 敦生 先生
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