メタンハイドレートなどの物質の起源を化学的に解明する地球化学
天然にある物質を「化学」的に理解する
「地球科学」というと、高校の授業なら「地学」というイメージがあるかもしれません。しかし地球科学はさらに広く地球上に存在する物質や現象を化学や物理学、数学、生物学などを使って総合的に理解しようとするものです。
なかでも「地球化学」は、文字どおり天然にある物質を「化学」的に分析します。地球表層の水やガスなどを調査して、その化学組成を分析し、それらがどういう環境でできたのか、現在の環境がどのように反映されているのかを調べます。
同位体を分析すると物質の移動や循環がわかる
メタンハイドレートというのは、天然ガスの成分であるメタンガスが海底下で氷状に固まっている物質です。火を点けると燃えるので「燃える氷」などと呼ばれ、エネルギー資源としても注目が集まっています。
また、メタンが豊富な環境ではヨウ素も大量に見つかっています。ヨウ素の濃度やその同位体の分析をすると、そのガスや水がどういう経緯でそこに来たのかを知ることができます。同じヨウ素でも重さの違うもの(同位体)がいくつかあり、ものによってはある一定の時間とともに違うものに変化していきます。そのため質量がどのくらい減っているかを量ると、ある時点からどのくらい時間が経ったかということがわかるのです。
未解明の謎を探究する
千葉県にヨウ素がたくさん採れる日本最大のガス田があります。田んぼや川の水から天然ガスが湧いていて、その水のなかにはヨウ素やメタンもたくさん溶けています。ヨウ素は、消毒薬などとして知られていますが、工業製品の材料としても使われています。日本のヨウ素生産量は、南米のチリに続いて世界第2位ですが、そのほとんどが千葉県から産出されています。なぜ千葉県だけで集中的に出るのか、なぜそこにメタンやヨウ素が集まってくるのか、まだわかっていません。そうした地球の不思議や謎を探究することが「地球化学」の課題の一つです。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 理学部 地球科学科 准教授 戸丸 仁 先生
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