病気の早期発見に役立つ「核医学検査」を身近なものに
「核医学検査」とは?
微量の放射線が含まれた薬剤(放射性医薬品)を患者に投与し、特別なカメラで画像化して体内の様子を調べる検査を「核医学検査」と呼びます。CT検査やMRI検査が臓器や組織の「形」や「大きさ」を調べるのに対し、核医学検査は臓器や組織の「機能」や「代謝状態」を測ります。脳の血流量の減少を測定することで脳梗塞の兆候に気づく、肝臓機能の変化を測ることで肝硬変を発見するなど、さまざまな病気の早期発見に役立っています。早期に治療をスタートできれば、発症を防ぐ、または進行を遅らせることができます。
画質を良くして検査時間を短縮
核医学検査には、大きくPET(ポジトロン断層法)とSPECT(単一光子断層法)の2種類があります。感度、定量性などの点ではPETの方が優れているものの、専用装置が高額なため導入している機関は限られています。また、検査費用もとても高く、誰もが受けられるような検査ではありません。そこで、保健医療学では、より多くの機関で検査できる、かつ検査費の安いSPECTの画質を、PETの画質まで高めようと研究が進められています。画質を改善することは、検査時間の減少にも貢献します。これまで30分かかっていた検査時間は、すでに半分の15分まで減りました。さらに5分に減らすことができれば、じっとしていることが難しい子どもにも活用できます。
AIをどう活用するかは人間次第
SPECTの画質向上には、AIを活用した「シミュレーションデータ」が使われています。実際の患者のデータではないので、病院を持たない研究機関でも使える、個人を特定できないよう処理する必要がないなど、メリットの多い方法です。これまでは実データを基に結果を導き出していましたが、AIを使うことで、求める結果を得るためにデータを集めるという全く逆のアプローチが可能になりつつあります。AIをどこにどう使うかは人間の力の見せ所です。研究者たちは日夜、AIの活用方法を模索しています。
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