薬の飲み方で効果が変わる? 薬剤師に求められる新たな役割

薬の飲み方で効果が変わる? 薬剤師に求められる新たな役割

薬を飲んだ後までフォローする

処方された薬を調合して渡すまでが薬剤師の仕事だと思っていませんか? 実は、薬剤師の仕事内容は大きく変わりつつあります。これまでは薬が患者の口に入るまでが仕事だと考えられてきましたが、これからは薬を飲んだ後までをフォローすることが求められます。

その薬、本当に効いている?

薬の飲み方によっては、薬効が発現しない場合もあります。例えば、ある高齢者施設で行われたアンケート調査で明らかになったのは、「とろみ調整食品」を使用した服薬方法の問題点です。嚥下(えんげ)機能が低下した高齢者は、水を飲むことで誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすリスクがあります。そのため7~8割の高齢者施設では、食べ物や水に「とろみ」をつけられるとろみ調整食品を使って、とろみをつけた水で薬を服用していました。しかし、この方法ではとろみ調整食品が薬を覆ってしまい、薬が崩壊しなくなるという問題があるのです。中には、薬が全く溶けないままの形で排せつされてしまった事例もあります。
この問題を解消するには、とろみ調整食品が接する時間を1分以内に抑える、とろみの濃度を必要以上に濃くしない、薬の崩壊に影響を与えにくい増粘多糖類(キサンタンガム)が含まれているとろみ調整食品を選ぶなど、とろみ調整食品で服薬するための適切な方法を周知する必要があります。

すべては患者のために

この問題が今まで見過ごされていたのは、薬剤師の在宅医療への介入が遅れているためです。これからは、薬剤師が患者の服用状況を確認して、適切に服用できているか、本当に薬が効いているか、副作用は出ていないかなどをしっかりフォローしていかなければなりません。それと同時に、薬学を介護職の学問としても発展させていく必要があります。医療に携わる多職種で連携して、まだ埋もれている問題点を拾い上げて改善していくことで、今まで以上に患者に寄り添い、薬剤師としての役割を果たすことができるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

国際医療福祉大学 成田薬学部 薬学科 教授 富田 隆 先生

国際医療福祉大学 成田薬学部 薬学科 教授 富田 隆 先生

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医療系薬学、医療社会学、食生活学

メッセージ

高校で学ぶ化学、物理、生物の知識は、薬学部に入学したときに、そして薬剤師になってからも役に立ちます。しっかり学んで基礎を身につければ、その力を患者さんのために使うことができるのです。だから、あなたが今勉強していることは将来に必ず結びつくと信じて、学びを大事にしてください。私が取り組んでいることは、患者さんの困りごとを解決する、まちの便利屋さんのようなもので、患者さんの喜びに直結する研究です。薬という対象の先に患者さんが見える、これこそが私の研究の一番の魅力です。

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本学は、栃木県大田原市、千葉県成田市、東京都港区、神奈川県小田原市、福岡県福岡市と大川市に6つのキャンパス、11学部26学科を展開する日本初の医療福祉の総合大学です。学部・学科横断で学ぶ本学独自のカリキュラム「関連職種連携教育」をはじめ、現代の医療福祉現場で不可欠な「チーム医療・チームケア」を実践的に学べる教育が特長です。2020年3月に開院した国際医療福祉大学成田病院など、6つの附属病院や多くの医療福祉関連施設を有し、充実した臨床実習環境を整備しています。