薬の飲み方で効果が変わる? 薬剤師に求められる新たな役割
薬を飲んだ後までフォローする
処方された薬を調合して渡すまでが薬剤師の仕事だと思っていませんか? 実は、薬剤師の仕事内容は大きく変わりつつあります。これまでは薬が患者の口に入るまでが仕事だと考えられてきましたが、これからは薬を飲んだ後までをフォローすることが求められます。
その薬、本当に効いている?
薬の飲み方によっては、薬効が発現しない場合もあります。例えば、ある高齢者施設で行われたアンケート調査で明らかになったのは、「とろみ調整食品」を使用した服薬方法の問題点です。嚥下(えんげ)機能が低下した高齢者は、水を飲むことで誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすリスクがあります。そのため7~8割の高齢者施設では、食べ物や水に「とろみ」をつけられるとろみ調整食品を使って、とろみをつけた水で薬を服用していました。しかし、この方法ではとろみ調整食品が薬を覆ってしまい、薬が崩壊しなくなるという問題があるのです。中には、薬が全く溶けないままの形で排せつされてしまった事例もあります。
この問題を解消するには、とろみ調整食品が接する時間を1分以内に抑える、とろみの濃度を必要以上に濃くしない、薬の崩壊に影響を与えにくい増粘多糖類(キサンタンガム)が含まれているとろみ調整食品を選ぶなど、とろみ調整食品で服薬するための適切な方法を周知する必要があります。
すべては患者のために
この問題が今まで見過ごされていたのは、薬剤師の在宅医療への介入が遅れているためです。これからは、薬剤師が患者の服用状況を確認して、適切に服用できているか、本当に薬が効いているか、副作用は出ていないかなどをしっかりフォローしていかなければなりません。それと同時に、薬学を介護職の学問としても発展させていく必要があります。医療に携わる多職種で連携して、まだ埋もれている問題点を拾い上げて改善していくことで、今まで以上に患者に寄り添い、薬剤師としての役割を果たすことができるでしょう。
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