がん予防の最前線! 「顔つき」が多様ながんを見抜く細胞診とは
短時間でがんかどうかを診断
顕微鏡で細胞を観察し、がんかどうかを判断するのが、臨床検査技師が関わる「組織診」や「細胞診」といった精密検査です。「組織診」は、体の組織を切り取り、ホルマリンで固めてから薄くスライスし、それを顕微鏡で見る検査です。体の奥のほうの組織まで検査することができますが、日数がかかり患者さんの体にも負担がかかります。一方「細胞診」は、臨床検査技師のなかで専門的な知識を身につけた細胞検査士が関わる検査で、細胞をガラスに塗り、それを顕微鏡で観察します。短時間で検査できる上、体にかかる負担が少ないのがメリットです。
一つとして同じがんはない
「細胞診」では、何と言っても細胞の変化を見抜く目が必要です。健康な細胞は核が小さくて形も均一です。しかし、細胞ががんに変化し始めると核が大きくなり、やがてがん化すると、核が異常なほど大きくなり、形のバランスが大きく崩れます。「細胞診」で顕微鏡をのぞくと、その様子がはっきりとわかります。
しかし、人間の顔がすべて違うように、がん細胞の「顔つき」にも一つとして同じものはありません。中には、がんのような顔をしながら本当はがんではないもの、逆に、がんではないように見えても実はがんだというものもあります。そんな千差万別の細胞の様子をつぶさに観察して判断し、がんを見抜くのです。そこに「細胞診」の最も大きな意義があります。
個人も社会もハッピーになれる
男性に多いがんの第1位は「胃がん」、女性の第1位は「乳がん」です。がんは、早期発見できずに進行してしまうと、治療が困難になります。がんで悲しい思いをする人を一人でも減らしていくことに貢献できるのが、短時間で負担なくできる「細胞診」なのです。しかも、検査のコストが抑えられるので、保険料の削減にもつながります。そういう意味で、個人はもちろん、社会もハッピーになれる検査と言えるのです。
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先生情報 / 大学情報
関西医療大学 保健医療学部 臨床検査学科 教授 矢野 恵子 先生
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