パラスポーツの用具開発を進化させるデジタル技術

パラスポーツの用具開発を進化させるデジタル技術

パラスポーツに必要な用具

身体障害や知的障害などを抱える人が障害種別や程度によりクラス分けされ競技するスポーツは「パラスポーツ」と呼ばれています。パラスポーツにはさまざまな種目が存在しており、身体障害のある人が競技する際には、それらの競技のレギュレーションに合わせた用具が用いられます。こうした用具は日々改良が続けられており、新たなテクノロジーの導入によって、さらなる進化を見せています。

デジタル化のメリットと手作業の重要性

水泳、自転車、長距離走の3種目を連続して行う「パラトライアスロン」に下肢に障害のある人が参加する場合、自転車はあおむけになって手でこぐハンドバイクを、長距離走は車いすレーサーを使用します。
ハンドバイクの開発では、競技者が足を置く台一つに対しても入念な検討と改良が繰り返されます。ほかにも、材質などの改善による軽量化や、より空気抵抗を少なくする形状のデザイン、直射日光を浴び続けて熱くならないようにするための塗装の工夫を行います。こうした用具を開発する場合、従来は、現物のモデルを作っては改善を繰り返すトライ&エラー方式での製作が主流でしたが、現在は、3DスキャナやCAD、3Dプリンタなどによってデジタルモデルを設計する手法が確立されて、はるかに早く製作できるようになりました。
デジタル化が進む一方で、競技者の体に直接触れる部分などは、製作者の手作業による調整が今でも必要です。その用具のどの部分をきつくして、どの部分をゆるくするか、数値では表せない調整を、製作者と競技者との間で綿密に相談しながら作り込んでいくことで、競技用の用具として最大限の性能を発揮できるようになります。

裾野を広げていくための取り組み

今の社会におけるパラスポーツの環境は、まだまだ整っていないのが現状です。競技を体験してみたい人が、必要な用具を気軽にレンタルできるような仕組みを整えるなど、パラスポーツの裾野を広げていく取り組みが、社会全体に求められています。

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広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 准教授 谷口 公友 先生

広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 准教授 谷口 公友 先生

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義肢装具学、スポーツ工学、福祉工学

メッセージ

高校生のときは、失敗してもいいので、いろいろなことにチャレンジしてみてください。失敗するくらいなら最初からやらない方がいい、と考えてしまうかもしれませんが、あなたのこれからの長い人生で考えれば、高校時代に経験するような失敗など、取るに足らないちっぽけなものです。高校を卒業したら、世界のあちこちを旅してみるとか、自転車で日本一周してみるとか、何でもチャレンジしてみて、その中で人間味のある失敗をしてみてもいいんじゃないかと思います。

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