車椅子のままでも立ち上がれる! 患者の夢をかなえる作業療法
立ち上がれる車椅子
作業療法では工学や心理学などさまざまな視点を取り入れながら、身体機能の改善をうながす方法や、できないことを可能にするための方法を考えます。例えば首のけがで頚髄(けいずい)を損傷し、手足がマヒしてしまった患者がいるとします。「また立ち上がりたい」と願っているものの、リハビリをしても自力で立ち上がることは難しい場合もあります。こうした患者の夢をかなえるために、電動で立ち上がる動き回れる車椅子が開発されました。スイッチを入れると、車椅子が患者の姿勢を制御して立ち上がった状態になるのです。
不可能を可能にする福祉用具の開発
日常生活の中には、高い場所に置かれている物を取るなど座ったままでは不便な動作が多くあります。「立ち仕事」といわれる、立たなければできない仕事もあります。もし足が不自由になった患者が自力で立ち上がる手段があれば、生活や就職へのハードルが下がるでしょう。ほかにも足を使わずに手だけで運転できる車など、患者ができないことを可能にするために、福祉用具の開発が行われています。福祉用具の開発では、患者の体への負担も考慮しなければなりません。姿勢を変えるときに無理な力を加えてしまうとけがにつながるからです。立ち上がる車椅子の開発でも、膝にかかる圧力や骨の密度との関係などが綿密に分析されました。
患者の体を正しく把握する
福祉用具の開発で作業や日常生活を支援するためには、患者の体の動きを正確に把握することが必要です。しかし人間が観察するとどうしても主観が入り、本当は動かない部分が動いているように見えるなどの錯覚をすることがあります。しかし近年では、体の動きを計測するセンサ技術が進歩したことにより、三次元動作の分析も進展しています。服の内側など外から見えない位置にセンサがあっても、正確に測定できるようになりました。動作を科学的に分析することで、より患者の体に合った作業療法の支援にもなると期待されています。
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神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 玉垣 努 先生
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