いのちのエンジニア~「臨床工学技士」が操作する医療機器とは~
臨床工学技士が担当する医療機器
「臨床工学技士」は、医療現場で生命維持管理装置などを扱う医療技術者です。「人工透析装置」「人工心肺装置」「人工呼吸装置」の3つが主要な生命維持管理装置です。
人工透析とは、腎不全の治療に用いられます。腎臓は、血中にある老廃物を尿として体外に排出する機能がありますが、人工透析装置は、腎臓の機能を代替します。この治療では、血液の流速の設定やダイアライザーという老廃物をろ過する中核部品の選択を主に行います。腎不全の症状は個人差があるので、患者さん個人に合わせたダイアライザーの選択や治療条件の設定が必要なのです。
いのちに直結する医療機器の設定
人工心肺装置は、心臓疾患の手術で一時的に停止させた心臓の機能を代替する医療機器です。心臓のポンプと肺で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換の役割を代わりに行います。手術で使用されるため、血管への接続や取り外しにともなう血液温度、血圧などの管理を行います。
人工呼吸装置は、自発呼吸が困難になった患者さんに対して呼吸をサポートする医療機器です。集中治療室など症状が重篤な患者さんに使用されます。この装置では、酸素の投与量や呼吸回数、モードの設定などを行います。モードとは、患者さんの自発呼吸を生かすのか完全に装置に頼るのかの設定です。人工呼吸装置がないと死亡する患者さんもいるので、終末期医療では使用に関して倫理的な問題が発生します。
病院全体の安全管理も臨床工学技士が担当
これらの医療機器のオペレーションは、医師の指示のもと話し合いながら行われます。装置に対する治療条件の設定方法はほぼ決まっていますが、細かな調整は任されています。また、人工透析では、多い人で週に3回通院するので、患者さんとの対話能力も求められます。3つの医療機器のうち、どの装置を扱うかは病院の規模や特色で決まります。
また、臨床工学技士は病院全体の安全管理も担当します。担当者が装置の点検や簡単なメンテナンスを行いますが、点検書類全体の管理も任されています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 福岡医療技術学部 医療技術学科 臨床工学コース 教授 佐藤 正広 先生
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