プラズマを使って、ダイヤモンドのような丈夫な膜を作る!
身のまわりにあるプラズマ
「プラズマ」とは、高温などの条件によって原子から電子が飛び出した状態を指し、固体、液体、気体に続く「物質の第4の状態」とも呼ばれています。プラズマは、太陽の核融合において発生することで知られていますが、地球上でも日常的に目にすることができます。雷、蛍光灯内部の光、マッチなどの炎、溶接の際に発生する光も、プラズマの一種です。プラズマは、電子が自由に飛び回っている状態であり、その特性を利用してさまざまな反応を起こすことができます。プラズマが物質とぶつかると、物が融けたり、削れたり、膜ができたりするのです。
プラズマによって、分子を壊す
プラズマと通常の物質を反応させると、分子が壊れ、別の物質の表面にくっついて薄い膜を生じさせることがあります。例えば、炭化水素分子をプラズマ中で分解させると、アモルファス炭素膜という膜ができます。この膜は「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)」とも呼ばれるもので、ダイヤモンドのような性質を備えた丈夫な膜で、製品の表面加工などに使用されます。
分子を分解するには、ほかにも高温や高圧状態を作るなどの方法がありますが、プラズマを使うと比較的低温でできるため、より安価に実現でき、高範囲な用途に利用することができます。分子が壊れていく様子や膜ができていく様子を原子レベルで解明することで、より効率的な作り方や、分子構造の一部を利用してほかの物とくっつけるといった作り方も考えられるようになります。
半導体から人工臓器まで
現在、プラズマによる加工は、半導体の製造、DVD等のディスク表面の仕上げ、刃物のコーティングなど、すでにさまざまな分野で活用されています。特にアモルファス状の炭素膜であるDLCは、ダイヤモンドのような硬さとなめらかさ、加えてほかの物質と反応しにくいという安定性を生かして、医療用具や人工臓器の表面をコーティングする用途に使用されています。今後もその用途が広がっていくことが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 工学部 電気工学科 教授 篠原 正典 先生
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