激減したアサリを取り戻す、干潟再生の秘策とは?

アサリの漁獲量激減の原因
アサリやハマグリは、誰もが一度は食べたことがあるポピュラーな食材でしょう。しかし、実は30~40年前から、アサリをはじめとする二枚貝の漁獲量が全国的に激減して、今ではほとんど採れない状態になっています。
原因は、アサリが生息する干潟の環境悪化です。干潟は海の河口近くや湾の中にあり、潮の満ち引きによって現れたり隠れたりする平らな砂地で、二枚貝の生息に適した場所です。今、その砂の量や二枚貝の養分となる「フルボ酸鉄」という成分が減っていることがわかっています。
干潟の栄養分が少なくなった
その要因の一つは、川に作られたダムだと考えられます。ダムは、洪水を防止したり発電に利用したりと、社会に欠かせない施設ですが、上流の山から流れてくる、養分を含んだ水と砂をせき止めてしまいます。山林の落ち葉が腐葉土になって分解されるときに出る成分と鉄とが結合して、二枚貝の栄養となる「フルボ酸鉄」ができるのですが、それが海まで届かないわけです。ダムから砂を排出するトンネルづくりも始まっていますが、有効な策とはなっていません。
干潟の栄養が足りないもう一つの原因は、下水道の普及です。かつては、栄養豊富な生活排水が海に流れ込む「富栄養化」が水質汚染の原因でした。しかし、下水道で排水中の養分を取り除く処理をするようになったため、皮肉なことに逆の「貧栄養化」という現象が起きてしまったのです。
アサリを増やす資材を開発!
こうした状況の中で、干潟再生の研究が行われています。その一つが水質改善資材の開発と、干潟への投入です。この資材は、下水処理で残った汚泥や、食品廃棄物、木くずなどを原料に、ケイ素や鉄を混ぜて発酵させることで生成されたフルボ酸鉄を含んでいます。
現段階で、九州の有明海と静岡県の浜名湖で試験的に投入されており、ヘドロの浄化や、アサリの個体数の増加といった効果が確認されています。安くて簡単な方法で干潟再生ができる資材として、全国への展開が期待されています。
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福岡大学工学部 社会デザイン工学科 教授渡辺 亮一 先生
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