プラズマが命を救う! 物質の「第4の状態」が秘める大きな可能性
物質の第4の状態「プラズマ」が秘める可能性
「プラズマTV」「プラズマカッター」など、プラズマという言葉はよく聞くと思いますが、その実体を知っていますか? 身近な雷やろうそくの炎、蛍光灯も実はプラズマです。プラズマは、気体に高い電圧というエネルギーを加えてできる放電した状態です。つまり、電子が離れた原子核である「プラスの電荷を持つイオン」と、「マイナスの電荷を持つ電子」がバラバラになっているのがプラズマで、固体・液体・気体に続く物質の「第4の状態」です。
プラズマを細胞に照射して遺伝子導入
このプラズマが、生体に大きなインパクトを与えることがわかってきました。理由はまだはっきり解明できていませんが、プラズマを細胞に照射すると細胞の働きが活性化し、なんと遺伝子がするりと細胞の中に入っていくことを2002年に日本の研究者がつきとめたのです。
これを利用すれば、遺伝子治療やiPS細胞の作成などに不可欠な「遺伝子導入」が従来の方法よりも効率的に行えるのではと期待されています。細胞にそれほどダメージを与えず、プラズマの力で高効率に、どんな細胞にでも遺伝子導入ができる日が来るかもしれません。
がんや遺伝性疾患の画期的な治療法も視野に
問題は、どんな装置でどうプラズマを照射すれば望む遺伝子導入ができるかです。強く照射すれば遺伝子は入りやすいですが細胞が損傷しやすく、弱ければ細胞ダメージは小さいですがうまく遺伝子が入りません。この課題を解決するのが髪の毛より細い直径約70ミクロンのプラズマ照射管で、強いプラズマを細い管で集中照射することで、高効率に細胞内に遺伝子が導入できる仕組みです。
皮膚や臓器、神経、がん細胞に至るまでプラズマを用いた遺伝子導入が実用化されれば、遺伝子治療や製薬など、医療をめぐる分野に革命が起こるでしょう。メカニズムの解明など課題はまだありますが、がんや遺伝性疾患の根本治療にもつながる可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
愛媛大学 工学部 電気電子工学科 教授 神野 雅文 先生
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