保険会社のリスクマネジメント

経営破綻はなぜ起きた
2000年代初頭、生命保険会社が相次いで経営破綻しました。株価や地価の大幅な下落、金利低下といった外部環境の影響は大きかったものの、破綻しなかった会社もありました。そこで、破綻した会社の関係者に聞き取り調査が行われたところ、社内に潜む「破綻リスク」が浮き彫りになりました。具体的には、経営陣に正しい情報が届きにくい体制だった、要職に就いたのが社長のお気に入りの人で、専門知識が乏しく重要な経営判断を誤った、といったことです。「コーポレートガバナンス(企業統治)」が著しく欠如していた実情が明らかになりました。
健全性規制の見直し
生命保険事業は公共性が強く、国による監督規制を受けています。保険会社の破綻を防ぐための指標として「ソルベンシー・マージン比率」というものがあります。1996年に導入されましたが、2000年前後に相次いで発生した破綻を防ぐことができませんでした。
算出基準が緩かったことに加え、保険会社の経営実態をうまく捉えることができていなかったという反省から、保険会社の監督規制を担当する金融庁は、目先の対応だけではなく、時間をかけて抜本的な見直しを行おうとしています。
確実なリスクマネジメント
新たな規制では、保険会社のリスクマネジメントの高度化を促すしくみも採用される予定です。「ソルベンシー・マージン比率」のような指標だけでは保険会社の経営破綻を防げないという考えに基づくものです。具体的には、金融庁が保険会社の経営陣と対話を行い、リスクマネジメントの実効性を探り、問題があれば改善を求めるというものです。
保険会社は個人や企業のリスクを引き受けるのが本業です。死亡リスクや長生きリスク、自然災害リスクなど、保険会社が引き受けるリスクは多岐にわたります。保険会社自身のリスクマネジメントがうまく機能しなければ、私たちは安心して保険に入ることができないのです。
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