「実験」で、自然現象の多様な世界が理解できるようになる!
実験を行わない物理の授業の弊害とは
高校の物理の授業では、カリキュラムや時間の関係で実験を行う余裕がありません。そのため、知識や法則を暗記することが授業の中心となり、「なぜそうなるか」という最も重要な部分の教育が抜け落ちてしまいます。本来、科学とは、仮説を立ててそれを実験して検証していくプロセスです。丸暗記したり、覚えることは科学ではありません。また、より良い実験やわかりやすい実験を行うためには、さまざまなアイデアや工夫が必要になります。
スマホを使って波の速度を計測
そこで新しいアイデアの実験法が開発されています。例えば、普段使っているスマホのハイスピードカメラを利用すれば、波の速度を計測できます。機種によっては1秒間に240フレームでビデオ撮影が可能ですから、水槽に水を入れ目盛りを付けて撮影すれば、1秒間に波が移動する距離を高い精度で計測できます。その際注意するのは、波を起こすときに、波が放射状に広がるのではなく、一方向に進むようにすることです。さらに、水深を変えると波の速度がどうなるかも実験してみます。そうすると浅いときの波の伝わる速さが遅いことがわかります。海岸で波面が海岸方向に平行に向かってくるのは、海岸の方が沖よりも水深が浅いために、起こる現象です。実験を行えば、1つのことからさまざまな自然現象に考えが及びます。
自然現象をイメージできる物理教育
高校生にとって教科書に書かれていることと自然現象は別の世界になってしまっています。本来、この2つは別のものではありません。しかし、普段の授業では、授業時間が足りなかったり、問題演習を行ったりするために、教科書と自然現象の関係をじっくり考える余裕がありません。授業の中や授業外で、ちょっとした実験や自然現象を実際に体験したり、考察したり、イメージしたりすることで、物理的思考ができるように変化します。これからの物理の教員には、物理が身近で、物理の面白さを感じさせることのできる授業を実践できるような学びが求められています。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 理学部 物理科学科 准教授 林 壮一 先生
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