自宅で救命を体験できる心肺蘇生AR
家庭で必要となる救急対応
実は、心肺停止して救急搬送される事例の多くは、家庭内で発生しています。もし、家族や身近な人が目の前で倒れたら、救急車が来るまでの間に適切な処置ができるでしょうか。心肺停止は、一刻一秒を争うのです。
救急搬送された患者のデータ分析が行われています。そこからわかるのは、患者の命を救い、社会復帰できるまでに回復するには、救急車が到着するまでの間の、その場の一般の人たちによる初期対応が不可欠だということです。しかし、そのための知識を得る機会が少ないのが現状です。どうしたら、多くの人が興味をもち、知識や技術を習得できるでしょうか。
気軽に学べるアイテムを開発
そのために開発されたのが、心肺蘇生AR(拡張現実)です。実際にある風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示するものです。手持ちのスマホやタブレットに、住みなれた家のリビングや寝室など実際の場所で、人が心肺停止で倒れる様子が表示されます。タップによって胸骨圧迫(心臓マッサージ)をして蘇生を試みるといった一連の救急処置をゲーム感覚で学べるようにしたものです。電気ショックを与えるAEDもタップすることで、使用を疑似体験できます。一般の人が気軽に学べるように、3DCGを駆使したアニメっぽいキャラクターが採用されています。これはアニメ関連企業との共同開発により実現しました。
多様なアプローチから正しい情報を提供
心肺停止した人は動かないと思っているかもしれませんが、実際にはけいれんしたり、死戦期呼吸といわれるしゃくりあげるような呼吸をしたりします。VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)を活用して、それらの症状についても正しい知識を得ることができます。また、ペットボトルを使って実際に胸骨圧迫の練習をすることも可能です。
将来的にはゴーグルなどを用いたVRで、胸骨圧迫を体験できるようになるでしょう。新しい技術を巧みに活用した多様なアプローチから、身近な問題でもある救命の課題解決に取り組むことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟医療福祉大学 医療技術学部 救急救命学科 講師 大松 健太郎 先生
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