描くだけがCGではない~技術で映像の新しい世界を切り拓く~
CG創作に必要なもの
美しくカッコいいCG(コンピュータグラフィックス)は、絵を描くアートの力だけで創造できるわけではありません。そこには工学的な技術力も必要です。私たちのまわりにある物理現象を単純なモデルに落とし込み、それをシミュレーションすることで多彩でユニークな動きをするCGを作れます。その一例が、「ばねモデル」です。それぞれの辺がばねでできている格子を想定して、それを組み合わせ、プログラミングによって対象の動きを作り出します。CGはアートと工学が組み合わさった表現なのです。
映像をいかに理解するか
CGの研究のなかでも、アートのような表現力が強調されると映画やゲームのようなエンターテインメント分野への応用が主になります。そこでは、現実を超越した世界をいかに作るかが課題です。一方で、現実の世界に近づける研究もあります。これは、現実の映像をいかに理解するかという研究で、「コンピュータビジョン」と呼ばれています。
例えば、車椅子に設置したカメラが映す映像から通るべき道と障害物を認知して、ぶつからないように目的地に移動する、といったことです。道や障害物のモデルを構築するという従来の方法ではなく、多くの映像から通路を学習・認知させる「ディープラーニング」を使って、そうでないものを障害物と判断するシステムが開発されています。映像をいかに解釈するかも、CGの研究分野に含まれるのです。
VRと感覚の関連を追究
CGの応用分野もあります。CGで作成したVR(仮想現実)映像を再生する、「ヘッドマウントディスプレイ」という装置があります。この装置で海辺にいる仮想世界を再現した状態で水を飲むと、塩味だと錯覚する現象が起こります。学問的に立証されたわけではありませんが、仮想現実と人間の感覚との関わりが明らかになれば、健康や医療分野で応用できるかもしれません。CGの技術の進化はめざましく、さまざまな可能性が広がっています。積極的に新しい技術を取り入れることが求められるのです。
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久留米工業大学 工学部 情報ネットワーク工学科 教授 河野 央 先生
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