大人の自閉スペクトラム症がある人を支える作業療法士の役割
自閉スペクトラム症とは何か
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)がある人は、コミュニケーションや人間関係の構築が苦手であるとともに、限定されたものごとに強い興味とこだわりに特徴がある、発達障がいの一つです。2020年に米国で行われた調査では、8歳児の36人に1人がASDであったとされています。ちなみにその調査では、ASDの男子は女子の3.8倍多いという結果も出ていますが、一方で、女性のASDは男性に比べて見過ごされやすいという問題も指摘されています。
大人になってからのさまざまな困難
ASDがある人は、子どもの頃から疎外されたりいじめに遭ったりすることが多く、学校や職場において否定的な体験を繰り返し経験しやすいことが明らかになっています。加えて、日常生活においても自己管理に困難を抱え、苛立ちを感じやすいといわれています。その結果、慢性的なストレスによりうつ病などの精神疾患を発症してしまったり、ひきこもってしまったりすることもあります。また、自分がASDであると知らずに成長し、「こころ」に不調を感じて病院に受診し、初めてASDであることを知る人も多いのです。
作業療法士が果たすべき役割
ASDとそれに伴う「こころ」の問題に悩む人のサポートには、作業療法士も関わるデイケア(医療施設での通所型のリハビリテーション)があります。デイケアでは、自己理解を深めたり、「こころ」の問題に対する工夫や社会的なスキルを学びます。こうした取り組みによって、自分らしさを理解し、また、「こころ」の問題の改善といった効果が得られる可能性があります。作業療法士は、その人の生活を尊重しながら、全体像を評価し、個別または集団でのプログラムを実施していきます。どのような人であっても生きやすい社会をつくるために、その人らしい生活の獲得を目指す作業療法士が果たす役割は大きいといえます。
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新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 准教授 村上 元 先生
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