もし体から「免疫」が失われたら?
「免疫力アップ」とはどういうことか
体を細菌やウイルスから守るのが免疫担当細胞です。免疫担当細胞にも多くのタイプがあり、例えば、好中球は細菌を捕食し、T細胞はウイルス感染した細胞やがん細胞を排除し、B細胞は抗体という飛び道具を使い免疫反応を誘導します。また、免疫システムの中心的役割を担う樹状細胞は司令官的な役割で、ほかの免疫担当細胞を制御して、体を病原微生物などから防御しています。免疫担当細胞は連携して働くため、どれが欠けても体を守れません。「免疫力アップ」とは、すべての免疫担当細胞のバランスを高いレベルで保つことなのです。また、医療現場で抗体や免疫担当細胞を調べることで病気の状態を把握できます。これを免疫検査と呼び、臨床検査技師の大切な仕事です。
ヒト一人ひとりにもタイプがある
免疫には血液型より細かくヒト一人ひとりにタイプがあります。HLA(ヒト白血球抗原)というもので、この型が異なるものは免疫システムから外敵とみなされ攻撃されます。臓器移植の際に拒絶反応が起こるのもこのためです。拒絶反応を抑えるためには免疫抑制剤や放射線で、免疫機能を抑えます。組織より感受性が高い免疫細胞の働きを止めるのですが、一歩間違うと組織にダメージを与える可能性があるため、ギリギリのラインを探らなければなりません。また免疫システムが機能しなくなるので、細菌やウイルスに抵抗できなくなります。移植手術が感染症のリスクが高いのはこのためです。
治療が難しい自己免疫疾患
免疫系の病気で重要視されているのが、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、バセドウ病などの自己免疫疾患です。免疫システムがうまく働かなかったり、過度に活性化し自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうことで発症する病気です。
原因となる病原微生物を排除すればいい感染症と違い、免疫システム自体を排除するわけにはいかないので治療も難しいのです。なぜ免疫システムが異常をきたすのか原因もまだわかっておらず、自己免疫疾患の多くが難病と言われています。
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先生情報 / 大学情報
新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科 教授 川村 宏樹 先生
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