3Dプリンタで義肢装具を作ることはできるか?
時間がかかる義肢装具作り
義手や義足などの義肢装具は、ケガや病気などが原因で手足にハンディキャップを抱えている人をサポートするのに欠かせません。従来、それらを製造するには、対象となる部位の周辺を型取りして原型となるモデルを作製し、プラスチックなどで成型して組み上げます。そして、装着してみて適合のための調整を施してから、最終的な仕上げを施して完成、という手順を踏む必要がありました。そこで、最新のテクノロジーを導入した、より精密な義肢装具製作手法の研究が進められています。
データで作り上げる義肢装具
新しい製作手法の中心となるテクノロジーは、3Dスキャナと3D CAD、そして3Dプリンタです。最初に3Dスキャナを使用して、対象となる部位の周辺を撮影し、各部の形状や大きさなどのデータを取得します。それらのデータを基に、3D CADを駆使して原型となるモデルを作製し、デザインや修正を施していきます。そうして作製したモデルのデータを3Dプリンタで出力し、最後に適合のための調整を施して完成というのが、新たな製作手法の流れです。
この手法のメリットは、従来と比べて、必要な情報をほぼすべてデータ化できるため再生産する際の再現性が高いこと、より最適化されたデザインの導入も可能になることなどが挙げられます。一方、現時点での課題としては、材質が従来型のものに比べるとやや軟らかいため、力学的分析を基にした構造設計や材料開発の研究が欠かせないことです。耐久試験や臨床評価試験の実施も、今後は必要になるでしょう。
最新テクノロジーがもたらす可能性
3Dスキャナや3Dプリンタを駆使した義肢装具の製作が実用化されると、遠く離れた場所で生活している人でも、機器さえあれば義肢装具を入手できるようになります。作業工程の大幅な見直しは、装具士の働き方改革にもつながります。最新のテクノロジーがもたらす可能性は、このような分野にも及んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科 講師 前田 雄 先生
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