まるで生き物のように変化し続けている日本各地の「方言」
年配者しか使わない方言があるのはなぜ?
若い世代の人たちと年配の人たちとでは、同じ地域内でも「方言」が微妙に違っていることがあります。言葉は時代とともに変化します。そして、消えるもの、使われ続けるもの、新しく加わるものなどがあります。
中学・高校の古文の授業で、意味が通じない言葉がある一方で、現代語とそれほど変わらない用法で使われている言葉もあるでしょう。方言も同様で、消えつつある方言と、新しく加わった若者が生み出す方言が混在しているのです。
狭い国土の中で多種多様な方言が生まれた理由
狭い国土の日本で方言が生まれた大きな理由は、江戸幕府による幕藩体制です。国内が200ほどの藩に仕切られ、他藩との行き来が簡単ではなかった時代が300年近くも続いたことで、藩ごとに方言が異なる、現在の方言の境界がほほ藩領と重なるという状態になっています。例えば福岡県の方言も、一括りに「博多弁」と言ったりしますが、実際には福岡藩・秋月藩・久留米藩・三池藩の藩領ごとに少しずづ方言が異なっています。
「そこに人が存在する」ことを、東日本では「いる」、西日本では「おる」と表現し、その打ち消しは東日本が「いない」、西日本は「おらん」です。この用法は万葉集の時代まで遡ることができ、日本の東・西で異なる表現が、現代も使われ続けている方言の好例と言えるでしょう。
ファッションと同様、方言にも「流行」がある!?
友だちの話に相づちを打つ時に、「あーね」という言葉を使うことはありますか。この「あーね」は、1990年代に福岡の若者の方言として生まれたものが九州全域の若者に広がり、九州以外の地域の若者でも使う人が現れるようになりました。地方で流行したファッションが全国的なブームになることがあるように、方言も何らかの要因により「一部地域だけの言葉」ではなくなるケースがあるのです。多くの人が日常的に使っている言葉・方言が、どんな理由で変化するのかを観察するのは、「日本語学」研究の面白さの1つと言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
福岡女学院大学 人文学部 メディア・コミュニケーション学科 教授 二階堂 整 先生
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