「皿が寝る」「クギが座る」 ロシア語特有の表現から見えてくるもの
言語表現から見えてくる発想や観点
外国語の表現には、その民族特有の発想や観点が含まれています。それは日本語と比較することで、より明確になります。例えばロシア語は、食器がキレイな状態を「食器が立っている」と言います。食器が平らに重ねて置かれていても、そう表現するのです。食器が汚れた状態は、「食器が横たわっている」と表現します。このように、ロシア語では「その状態がどうなっているか」という観点で表現します。一方の日本語は、「誰がどうしたか」に観点があり、表現には「人が存在」します。「食器を片付ける」「食器を置く」「食器を洗う」など、人の動作を表現するのです。
言語の表現を比較してわかること
これは、ビジネスシーンでも当てはまります。ロシア人は、その状態や起きていることに焦点を当てるため、ストレートに物事を表現したり、指摘したりします。日本人は、起きたことに対して「誰が責任者なのか・責任を取るか」を意識します。うまくまとめようと遠回しに表現することもあるので、それを知らないロシア人は待てなくなり、途中で交渉を打ち切ろうとすることさえあるのです。
言語学を通じて相手の観点を理解することが、スムーズなコミュニケーションの入り口になります。さらに日本語と比較検討すると、日本語に含まれるニュアンスや背景、観点が浮き彫りになってきます。何気なく使っている日本語や日本文化への理解が深まるきっかけになります。
互いに理解し、信頼し合うために
ロシア語の表現の特徴として、「立つ」「横たわる」のほかにもうひとつ、「座る」があります。これには「邪魔なもの」というニュアンスがあります。「目に入ったゴミが座っている」「壁のクギが座っている」という具合です。こうした表現方法は、文法や語彙、文語を学ぶだけでは身につきません。話し言葉としての表現をたくさん知ることで、民族の特徴が見えてきます。それを互いに理解し合えれば、信頼関係を効果的に構築できるようになるでしょう。
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京都外国語大学 外国語学部 ロシア語学科 准教授 三好 マリア 先生
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