犯罪を防ぐ! 捜査や更生を支える司法・犯罪心理学と福祉心理学
ウソ発見器は「記憶」の捜査
刑事ドラマの取り調べのシーンなどに出てくるウソ発見器「ポリグラフ検査」は、被験者の体にセンサをつけて心拍数や呼吸の変化を見るものです。例えば窃盗事件で被害金額が5万円だった場合、盗んだ金額について、「1万円でしたか?」「3万円でしたか?」、さらに5万円、7万円、10万円……と順に質問します。もし犯人ならすべてに「いいえ」と答えても、正解の「5万円」のときにドキッとして心拍数や呼吸に変化が出ます。ポリグラフ検査は犯罪の事実に関わる記憶を調べるもので、心理学を生かした捜査方法の一つです。心理学を用いて科学的に分析する「司法・犯罪心理学」はいくつかの分野に分かれており、ポリグラフ、プロファイリングなど犯罪捜査の支援方法についての研究は「捜査心理学」と呼ばれています。
こころのケアで立ち直りを支援
また、罪を犯した人のこころの問題を扱う分野に「矯正心理学」があります。加害者の更生(立ち直り)を支えて再犯を防ぐための心理的アプローチについて、さまざまな研究が行われています。
加害者の多くは子どものころに虐待を受けた体験や逆境体験があり、人に気持ちを打ち明けたり悩みを相談したりすることが苦手でストレスや不安をためこみやすい傾向があります。それが非行や犯罪につながることもあると考えられます。ネガティブな気持ちとうまくつきあうには人に話すことがとても大切なので、加害者が人に気持ちを伝えられるようにするために、カウンセリングやグループワークなどのこころのケアが行われています。臨床研究活動として、少年院、少年刑務所・刑務所でのカウンセリングやグループワークに取り組む心理学者もいます。
犯罪予防のためのケアも
虐待を受けた子どもたちに対する心理的ケアもまた、苦しむ子どもを救い、非行や犯罪を予防するために重要です。児童相談所、児童養護施設や児童自立支援施設などにおけるこころのケアも犯罪心理学、そして福祉心理学の研究テーマの一つとなっています。
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