農業廃棄物から作る環境にやさしいプラスチック
自然界で分解する新しいプラスチック
あなたは1週間に、クレジットカード1枚分にあたる5グラムのプラスチックを食べているかもしれません。石油から作られる合成プラスチックは非常に分解されにくいため、海に流れたプラスチックが微粒子化して海洋生物に取り込まれ、魚や塩を通して人もかなりの量のプラスチックを摂取していると考えられています。そこで、海洋でも分解される、セルロースを使った新しいバイオプラスチックの開発が進められています。
特殊な溶剤でセルロースを溶かす
セルロースは平行に並んだ直線状の分子が水素結合で架橋された結晶構造をしているため、水にも有機溶媒にも溶けませんが、イオン液体という特殊な溶剤には溶かすことができます。イオン液体は、室温で液状の塩(えん)で、セルロース分子の間に入り込んで水素結合を切断して溶かします。溶かすことでいろいろな化学修飾が簡単になり、セルロースからプラスチックを作れるようになります。セルロースを構成するグルコースには3つの水酸基があり、その水酸基をいくつ化学反応させるか、どのような構造によって化学修飾するか、種類と数の組み合わせで理屈上は膨大な種類のセルロース由来プラスチックを作ることができます。
環境にやさしい未来社会に向けて
セルロースの原料には、サトウキビの搾りかすなどの農業廃棄物(バイオマス)を使用します。バイオマスにはセルロースのほかにもヘミセルロースやリグニンなどが含まれますが、捨てる部分をなくして全部使うことが重要です。バイオマスの種類により構成成分が違うので、プラスチックの性質が変わることになります。しかし、それを逆手にとって、例えば地域の特産品由来のバイオマスを原料にすれば、地域限定の固有の性質を持つ「ご当地プラスチック」を作れるかもしれません。このようなユニークなアイデアによって、あなたがつくる未来社会では地域経済の発展と環境負荷ゼロを両立することも夢ではないはずです。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 理工学域 生命理工学類 助教 和田 直樹 先生
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